最新記事
日本政治

若者は支持、金融市場は警戒──高市首相の積極財政を世界はどう見ているのか

Takaichi’s Big Bet

2025年12月24日(水)06時00分
ウィリアム・スポサト (ジャーナリスト)
戦略的な財政出動で強い経済を構築していく と高市首相は強調する via REUTERS

戦略的な財政出動で強い経済を構築していく と高市首相は強調する via REUTERS

<国内では若年層の圧倒的支持を誇るが金融市場は「トラスショック」の再来を警戒する>


▼目次
世界が首をかしげる日本経済の状況
増え続ける「新たな」債務

日本政府は2025年11月21日、21兆円規模の総合経済対策を閣議決定した。高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」に基づく政策だ。

しかし金融市場は膨大な借金を抱える財政にさらなる負担をもたらす政策とみて、「トラスショック」の再来を警戒している。トラスとは22年にイギリスで「財源なき減税」を打ち出して市場の猛反発を食らい、辞任を余儀なくされたリズ・トラス元首相のこと。高市はその二の舞いになる危険があるというのだ。

もっとも、外国の投資家が高市の政策に警戒感を強めても、日本の国債市場は借金財政に慣れっこのようで、特段の動揺を見せなかった。

総合経済対策は高市が唱える「強い経済」を実現する政策と位置付けられる。1990年のバブル崩壊以降、長引いた低迷から日本経済を救う大胆な施策との触れ込みだ。

世論の不満に応え、歳出の多くは物価対策に充てられる。ただし、その目玉はインフレを抑える抜本的な施策ではなく、家計を助ける補助金だ。

日本のインフレ率は3%前後と、諸外国と比べれば比較的穏やかな上昇にとどまっている。だが主食のコメをはじめ食料品の値上がりは大幅で、家計を直撃している。そのため高市は電気・ガス料金の補助や子育て応援手当といった支援策を打ち出した。

加えて、半導体や造船など17の戦略分野に重点的に投資を行う意向だ。この政策は戦後の復興期に旧通商産業省が強力に推進した産業政策(「日本の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を支えたとされる政策だ)を想起させる。

日本経済の力強い回復は誰しも望むところだろうが、歴代の前任者がおおむね失敗した経済政策で高市が大手柄を立てるとは期待しにくい。過去の財政支出による景気刺激策、特に大規模インフラ事業を中心とした90年代の施策は経済全体を底上げする効果はほとんどなく、政府債務残高を増やし続けただけだった。

過去30年間、歴代の政権は口先では「財政上の責任」を唱えつつ、歳出を削減するどころかより安易な大盤振る舞いを続けてきた。IMFのデータによれば、80年には対GDP比48%だった日本政府の債務残高は2020年にピークの258%に達した。それに比べ、目下非常に危惧されている米政府の債務残高は対GDP比125%にすぎない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、2月下旬に党大会開催 5年に1度の重要会議

ビジネス

米紙ワシントン・ポスト発行人が退任、大規模人員削減

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で

ワールド

イラン、中東の米軍基地標的に 米が攻撃なら=外相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 6
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 7
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中