若者は支持、金融市場は警戒──高市首相の積極財政を世界はどう見ているのか
Takaichi’s Big Bet
戦略的な財政出動で強 い経済を構築していく と高市首相は強調する via REUTERS
<国内では若年層の圧倒的支持を誇るが金融市場は「トラスショック」の再来を警戒する>
▼目次
世界が首をかしげる日本経済の状況
増え続ける「新たな」債務
日本政府は2025年11月21日、21兆円規模の総合経済対策を閣議決定した。高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」に基づく政策だ。
しかし金融市場は膨大な借金を抱える財政にさらなる負担をもたらす政策とみて、「トラスショック」の再来を警戒している。トラスとは22年にイギリスで「財源なき減税」を打ち出して市場の猛反発を食らい、辞任を余儀なくされたリズ・トラス元首相のこと。高市はその二の舞いになる危険があるというのだ。
もっとも、外国の投資家が高市の政策に警戒感を強めても、日本の国債市場は借金財政に慣れっこのようで、特段の動揺を見せなかった。
総合経済対策は高市が唱える「強い経済」を実現する政策と位置付けられる。1990年のバブル崩壊以降、長引いた低迷から日本経済を救う大胆な施策との触れ込みだ。
世論の不満に応え、歳出の多くは物価対策に充てられる。ただし、その目玉はインフレを抑える抜本的な施策ではなく、家計を助ける補助金だ。
日本のインフレ率は3%前後と、諸外国と比べれば比較的穏やかな上昇にとどまっている。だが主食のコメをはじめ食料品の値上がりは大幅で、家計を直撃している。そのため高市は電気・ガス料金の補助や子育て応援手当といった支援策を打ち出した。
加えて、半導体や造船など17の戦略分野に重点的に投資を行う意向だ。この政策は戦後の復興期に旧通商産業省が強力に推進した産業政策(「日本の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を支えたとされる政策だ)を想起させる。
日本経済の力強い回復は誰しも望むところだろうが、歴代の前任者がおおむね失敗した経済政策で高市が大手柄を立てるとは期待しにくい。過去の財政支出による景気刺激策、特に大規模インフラ事業を中心とした90年代の施策は経済全体を底上げする効果はほとんどなく、政府債務残高を増やし続けただけだった。
過去30年間、歴代の政権は口先では「財政上の責任」を唱えつつ、歳出を削減するどころかより安易な大盤振る舞いを続けてきた。IMFのデータによれば、80年には対GDP比48%だった日本政府の債務残高は2020年にピークの258%に達した。それに比べ、目下非常に危惧されている米政府の債務残高は対GDP比125%にすぎない。





