最新記事

ウクライナ支援

ウクライナ支援、仮想通貨で85億円の義援金集まる ロシアのアート集団もNFTチャリティーに協力

2022年3月30日(水)13時45分
青葉やまと

ウクライナのデジタル変革省が仮想通貨14種類で寄付を受け付けた  

<ウクライナ軍の防衛活動とインフラ復旧を支援しようと、仮想通貨やNFTなどの先端技術を通じて善意が集まっている>

ウクライナへの仮想通貨による義援金が、3月28日時点で6900万米ドル(約85億円)に達した。義援金はウクライナ・デジタル変革省が公式に募集しているもので、ビットコインをはじめ代表的な仮想通貨14種類で寄付を受け付けている。

フョードロフ副首相兼デジタル変革相は、日本時間20日時点で寄付額が6000万米ドル(約72億円)を突破したのを受け、「仮想通貨のコミュニティよ、あなたたちは最高です!」と謝意を示した。


ツイートを通じ、「これだけの莫大な支援に、私たちは恩義を感じています。寄付の一件一件に大切な意味があります」「仮想通貨は絶大なインパクトをもちます」と述べている。寄付金は、防弾チョッキや食料などの購入を通じ、ウクライナ軍の活動の支援に充てられる。

ウクライナではこれまで仮想通貨取引の合法化が議論されていたものの、直近までは合法でも違法でもないグレーゾーンとなっていた。ゼレンスキー大統領は3月16日、新たな合法化法案に署名。これにより、暗号資産の合法化が実現した。

NFTの販売益で巨額を調達

今回の資金調達にあたり、話題のNFT(非代替性トークン)の販売益が大きく貢献している。敵対国であるロシア側のアート集団も、義援金の募集に協力した。

NFTとは、アートなど特定のモノの所有者であることをデジタル技術で証明するしくみだ。所有権を購入しても作品が物理的に手元に届くわけではないが、人気作品の場合は公式なオーナーとなりたい人々が殺到し、高値で競り落とされることがある。

ウクライナ侵攻開始の翌日、投資グループ、NFT専門機関、そしてロシアのアーティスト集団「プッシー・ライオット」の三者が「ウクライナDAO」と呼ばれる資金調達活動を共同で立ち上げた。アート作品の所有権をNFTとして販売したところ、米ドル換算で300万ドル(約3億6000万円)の寄付をわずか3日間で集めている。

この企画は、ウクライナ出身・ロンドン在住のアーティストであるアローナ・シェフチェンコ氏が発案したものだ。彼女は仮想通貨ニュース媒体のコインデスク誌に対し、ウクライナの街が爆撃されていると現地の友人から連絡を受けたことで、行動を起こしたいと考えたと語っている。

NTFアート収集家たちが集まる自主組織「PleasrDAO」に連絡をとったところ、「たくさんの素晴らしい人々が、私を助けようと(企画に)飛び込んできてくれたのです」と彼女は振り返る。ロシアのアーティストも企画に賛同し、作品を提供した。こうして3億6000万円が集まり、ウクライナ政府の募金企画に寄付された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

現代自、米国生産を拡大へ 関税影響で利益率目標引き

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中