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ウクライナ情勢

ロシアでプーチン支持率71%に上昇 今後は政権維持のため戒厳令の導入も?

1990年代に日露交渉に携わったゲオルギー・クナーゼ元外務次官も「精神異常者の愚行を止められなかったことをウクライナの人々に謝りたい」と書いた。

経済学者のアンドレイ・チェレパノフ氏は「真実を伝えるメディアがあれば、戦争終結を求める反乱が起きたはずだ。クレムリンはそれを極度に恐れた」と指摘した。

このほか、大統領選に出馬したタレントのクセニア・サプチャク氏、映画監督のロマン・ボロブエフ氏、テニスのダニール・メドベージェフ氏、ノーベル平和賞を受賞した「ノバヤ・ガゼータ」紙編集長のドミトリー・ムラトフ氏、「アルミ王」と呼ばれた新興財閥のオレグ・デリパスカ氏ら多くのセレブやスポーツ選手らが停戦を要求した。

即時停戦を求めるオンライン署名は100万人を超え、医師や建築家ら各業界の抗議書簡も発表された。

50都市以上で反戦デモが行われているが......

詐欺罪などで投獄されている反政府運動指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は獄中から発信し、プーチン大統領を「狂気の皇帝」と非難。「ウクライナ侵略戦争に気づかないふりをする臆病者の国になってはならない」とし、不服従の抗議デモを毎日行うよう国民に呼びかけた。

ナワリヌイ氏は2020年夏、シベリアで化学兵器の一種であるノビチョクを何者かにもられて重体となり、ドイツの病院で療養。昨年1月に帰国した際、空港で逮捕され、有罪となった。

ナワリヌイ氏らの呼びかけに応じ、2月24日の開戦以来、50都市以上で反戦デモが週末に行われ、数万人が参加。3月6日までに約7000人が拘束された。

ロシアでは、選挙不正や年金改革に反発するデモは発生するが、反戦デモは異例だ。とはいえ、モスクワのデモは3000人規模にとどまっており、参加者の多くは警察に連行された。政権に打撃を与えるには10万人規模に広がる必要がある。2011年の下院選の不正に反発する反プーチン・デモは、若者や中産階層を中心に10万人以上に膨れ上がり、警察は座視するだけだった。

「プーチンはエリートの間で支持を失っている」

2014年にロシアが無血でクリミアを併合した時、国民は陶酔状態となってプーチン支持に結集した。しかし、8年後のウクライナ戦争は凄惨な市街戦となり、エリートや知識層の間で動揺が広がっているようだ。

著名な社会学者、オリガ・クリシュタノフスカヤ氏は、「プーチンはエリートの間で支持を失っている。政権幹部の忠誠心にも陰りが出始めた。情報源をテレビからネットに切り替える人が増えており、誰もが真実の情報を求めている」と分析した。

ロシアは口コミ社会で、犬の散歩や台所の会話で、人々は情報交換し、激しい議論を展開しているという。

欧米が発動した過去最大の経済制裁も今後、庶民の生活を脅かし、生活水準低下を招くのは必至だ。生活苦も反戦機運を高める要素となる。

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