最新記事

南シナ海

中国、南シナ海で新たに3環礁を軍事基地化 米比は合同軍事演習を過去最大規模で実施へ

2022年3月27日(日)19時35分
大塚智彦
フィリピンと米軍の合同軍事演習「バリカタン」

フィリピン軍と米軍による合同軍事演習「バリカタン」が今年は顔最大規模で実施される US Military Defense / YouTube

<ロシアのウクライナ侵攻は中国による海洋進出に悩むフィリピンにも衝撃を与えた──>

フィリピン軍と米軍による合同軍事演習「バリカタン」が3月28日から4月8日までフィリピン北部ルソン島を中心に行われることを22日にフィリピンが発表した。

「バリカタン」は2020年には折からのコロナ感染拡大や米国との関係がこじれた影響などを受けて中止。2021年は規模を縮小して実施された。

2020年にはドゥテルテ大統領がフィリピン国内での米軍の活動を認める「訪問軍地位協定(VFA)」の破棄を表明。米国との関係が一時悪化した時期もあった。

しかし今回の「バリカタン」はこれまでを上回る最大規模で実施される予定で、フィリピン軍から3800人、米軍からは5100人の合計8900人が参加。南シナ海での中国の一方的な領有権主張、海洋権益拡大を受けて、水陸両用作戦や航空作戦、人道支援、対テロ作戦などを実施する予定で、過去最大規模の演習になるという。ちなみに「バリカタン」はタガログ語で「肩を並べる」という意味だ。

ウクライナ侵攻のロシアを意識

今回のバリカタン合同軍事演習は、2月24日のロシアによるウクライナ軍事侵攻と無関係ではなく、4月10日には駐米フィリピン大使がドゥテルテ大統領の意向として「ウクライナ情勢がアジアに波及した際は米軍がフィリピン国内の軍事施設を自由に使用できるようにする用意がある」として、米軍の有事の際の増派に対応する姿勢を明らかにしている。

米軍とフィリピンは「訪問軍地位協定(VFA)」をめぐって2020年にドゥテルテ大統領が破棄を米国に通告し、関係がぎくしゃくした。これに対し対中国でフィリピンは重要な同盟国であることから2021年7月にオースティン米国防長官がフィリピンを訪問してVFAの継続が確定した経緯がある。

今回の「バリカタン」はこうした背景からロシアによるウクライナ軍事侵攻、そして南シナ海での中国の活動を意識したものとなるとみられており、3月22日には米軍の輸送機オスプレイがスービック基地に先着している。

米軍はかつて基地があったスービックやクラーク基地を拠点にルソン北部の演習場所に展開するものとみられている。

中国による南シナ海の軍事拠点化

米軍とフィリピン軍がこの時期に過去最大級の合同軍事演習を実施する背景の一つとして、中国による南シナ海での環礁の軍事化が急速に進んでいることもあるとの見方が有力だ。

米軍の偵察衛星などの情報から、米軍は少なくとも南シナ海の3つの環礁が最近中国による軍事拠点化が確認されたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協

ワールド

トランプ氏、民主6議員を「反逆者」と非難 軍に違法

ビジネス

米9月中古住宅販売、1.2%増の410万戸 住宅金

ワールド

中ロ、ミサイル防衛と「戦略安定」巡り協議 協力強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中