最新記事

国際情勢

ウクライナ戦争を「ちゃんと理解する」ために、いま読むべき3冊の本

2022年3月29日(火)18時05分
flier編集部
ウクライナ地図

Nikola93-iStock

<プーチンの軍事戦略、第二次大戦の教訓、SNSでの情報戦...この3冊を読めば、ロシアとウクライナで起きていることとその意味が理解できる>

ウクライナに攻め入るロシアが強硬姿勢を崩さない中、各国の思惑が交錯し、世界中が言い知れぬ緊張感に包まれています。

なぜこのような状況になってしまったのでしょうか。

誰もが固唾をのんで見守る国際情勢、その理解を助ける3冊をご紹介します。(この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です)。

ロシアの軍事戦略を読み解く

最初にご紹介するのは、ロシアの軍事に詳しい東京大学の専任講師、小泉悠氏による『現代ロシアの軍事戦略』です。

ロシアの外交や国防の文書を読み解き、西側諸国の見方を織り込みながら、豊富な視点を提供してくれる一冊です。毎年秋に行われるロシアの軍事演習を丹念にウオッチするなど、独自の分析も交えています。

本書によると、ロシアは常にNATO(北大西洋条約機構)に象徴される「西側」と非線形の「永続戦争」をしている「戦時下」にあるとされます。そうした危機感を背景として2014年にクリミア併合という事変に至りました。西側は、ロシアが軍事に限らずサイバー攻撃や陽動作戦を巧みに組み合わせた「ハイブリッド戦争」という新たな戦争形態を編み出したとして、警戒感を強めています。

ロシアは、プーチン大統領は何を目指しているのか、その答えのカギとなる分析や示唆に富んだ良書と言えるでしょう。

220326fl_ruk02.jpg

『現代ロシアの軍事戦略』
 著者:小泉悠
 出版社:筑摩書房
 flierで要約を読む

戦禍を繰り返さないために

続いてご紹介するのは『独ソ戦』です。「独ソ戦の実態に迫る、定説を覆す通史」として「2020年新書大賞」(中央公論新社主催)に選ばれた快作です。ドキュメンタリータッチでその戦争の惨禍を克明に描きながら、政治に目をつむることの恐ろしさを伝えています。

近現代における「最悪」の政治的転落である第二次世界大戦のうち、最も被害の大きかった独ソ戦。この戦いを知ることは、政治の失敗が何を生むのかを理解することにつながります。

独ソ戦は、ドイツのヒトラー、ソ連のスターリンだけが突っ走って起こされた悲劇ではありません。多くのドイツ国民がそれに「賛同」し、さまざまな地理的もくろみのなかで、ある意味、自分たちの生活を守るために行なわれた惨劇でした。

戦前から練られてきた用兵思想の「作戦術」が機能したことがソ連勝利につながったと分析するなど、新たな史観とともに、悲劇を繰り返さないための知恵を与えてくれる一冊です。

220326fl_ruk03.jpg

『独ソ戦』
 著者:大木毅
 出版社:岩波書店
 flierで要約を読む

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国企業、28年までに宇宙旅行ビジネス始動へ

ワールド

焦点:笛吹けど踊らぬ中国の住宅開発融資、不動産不況

ワールド

中国人民銀、住宅ローン金利と頭金比率の引き下げを発

ワールド

米の低炭素エネルギー投資1兆ドル減、トランプ氏勝利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中