最新記事

ウクライナ侵攻

ウクライナ侵攻は「第一次情報大戦」 市民も草の根で対抗

2022年3月7日(月)18時25分
青葉やまと

ロシアは「情報を非合法化」

一方のプーチン氏は、ロシア国内でのFacebookとTwitterの利用を禁じた。また、政府がフェイクニュースと判定した情報を流したジャーナリストを最大で懲役15年の刑に処すとしている。

カドワラード氏はこの方針を「情報を非合法化しようとする異常な措置」であり、「破れかぶれで滑稽」な動きだと指摘する。「なぜなら2022年にあって、情報を禁止することなどできないからだ。酸素を禁止するようなものだ。」

守勢に入ったプーチンの一手を、氏は悪手だと指摘する。「現状で先を見通すことなどできないが、ひとつだけ確かなことがある。『情報戦』と呼ばれる手法の父であったプーチンが、たった今、情報戦に敗けたのだ。」

また、カドワラード氏は次のようにも述べ、ITを活用するゼレンスキー大統領と旧態然としたプーチン氏の手法を対比した。「これは嘘対真実の闘いだ。闇対光だ。スターリン対TikTok世代の人々だ。」

ロシア自身が最初の犠牲者

ロシアが仕掛けるプロパガンダとフェイクニュースは、ハイブリッド戦争の重要な一角を担う。しかし専門家は、ロシアが自らが仕掛けた偽の情報に惑わされ、泥沼にはまっていると指摘する。

チェコ・カレル大学のヤン・コフロン助教授(国際関係学)は侵攻が始まる前の時点で、戦局の予備評価を行なっていた。米政治アナリストのスティーブン・ビドル氏による戦力モデルに基づいて分析したところ、ウクライナ軍には最低でも2〜3週間を耐え抜く防衛能力があるとの評価結果が出ている。

一方、ロシア国営メディアが誤って公開した予定稿からは、開戦48時間以内の勝利宣言をロシア側が予定していたとの内部事情が読み取れる。これはコフロン助教授による事前の分析に大きく反するものだ。

助教授は国際放送局のラジオ・プラハに対し、「ロシア側はウクライナを過小評価していた可能性が高いのです」と指摘する。「あろうことか自分たち自身の嘘を信じはじめたという意味で、(ロシア側は)ハイブリッド戦争の最初の犠牲者のように思われます。」

ハイブリッド化する戦争を受け、情報を活用するウクライナと遮断を試みるロシア。対照的な姿勢が国際的な注目を集めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中