最新記事

ルポ

「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった

THE RESISTANCE BEGINS

2022年2月26日(土)20時55分
ジャック・ロシュ(ジャーナリスト)

220308p26_ruh02.jpg

郊外で攻撃位置に就く兵士ら MAKSIM LEVIN-REUTERS

「恐ろしかった」と、寡婦のガラクティヨノワは言う。「こんなことは聞いたことも見たこともない」

24日の残虐な出来事は、彼女にとって自分の国とロシアの結び付きを断ち切るものだった。「以前はいい人たちだと思っていた。今は、彼らは戦争がしたいだけ」

この瞬間にも多くのウクライナ人がロシアの侵攻から逃れようと移動しており、近隣諸国は避難民の流入に備えつつある。空爆はウクライナ全土に及び、国連難民機関の推計によると、10万人以上が荷物をまとめて住む家を離れ、国内の他の地域を目指し、あるいは国を出ようとしている。

EU圏との国境には長い列が伸びている。スーツケースを抱え、ポーランドやハンガリーに歩いて渡ろうとする人もいる。

戦闘はウクライナ全土で激しさを増している。南東部の港湾都市マリウポリも砲火を浴びた。ウクライナ内務省の発表によると、キエフ地方でロシア軍のヘリコプター1機と国籍不明の3機が撃墜された。

ジョー・バイデン米大統領は24日午後に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナを越えて進むだろうと警告した。「彼の野望はウクライナよりはるかに大きい。旧ソビエト連邦の復興を目指しているのだ」

「世界中が私たちの味方だ」

長引く包囲と残忍な襲撃が迫り来るハリコフの街だが、希望はまだ鎮圧されていない。

アレクサンデルとカーチャ(安全を危惧してファーストネームのみ)は7年前に、東部ドネツクで暮らしていた家を追われた。若いカップルは今、さらに大きな惨事に直面しているが、挑戦的なほど楽観的だ。

「おじけづきそうになるけれど、私たちは前を向き続ける」と、ITサポートの仕事をしているアレクサンデル(27)は言う。「ドネツクは14年にあっけなく陥落した。でも、ここでは守られていると感じる。どういうわけか、あまり落ち込んだりしていない」

「ドネツクでは、私たちはとても孤独だった」と、コンピュータープログラマーのカーチャは言う。「今は全世界が私たちの味方だと、心から思える」

もっとも、2人は今のところ、ハリコフからの脱出を考えることはできない。「あまり余裕がない」と、アレクサンデルは肩をすくめた。「脱出しようと思ったら、資金や親族の援助、行き先の計画、仕事の当てといったことが必要になる。私たちは勇敢なのか、あまり賢くないだけか。正直なところ、今はただ、戦争に鈍感なだけかもしれない」

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中