最新記事

ドーピング

「祖父の薬で陽性反応」 ワリエワ側の主張はありえない

Kamila Valieva's Grandpa's Meds Defense 'Highly Unlikely': Doping Expert

2022年2月16日(水)16時28分
ジョン・ジャクソン

コズメンコは聴聞会で別のシナリオも提示した。ワリエワの祖父がなにかの表面に薬を置き、「痕跡が残った」ところを触ったワリエワが、何らかの形で無意識のうちに成分を摂取した可能性がある、というものだ。その可能性について問われたカトリンは、またしても懐疑的な態度を示した。

「仮に錠剤がなにかの表面に並べられて、後からやってきた人が、薬が置かれていた場所を手で触れたとしても、薬物検査に引っかかるほどの物質が体内に移動する可能性は極めて低い」と彼は語った。

ニューヨーク・タイムズ紙が15日に報じたところでは、仲裁裁判所で13日に行われたワリエワの聴聞に提出された文書で、彼女の体内には心臓病の治療に使われる3種類の物質があったことが明らかになった。禁止薬物はトリメタジジンのみだったが、持久力を高め、より高い酸素効率をもたらすために、3種類の薬物を組み合わせて服用した可能性がある。

ワリエワの検体からトリメタジジンに加え、ヒポクセンとL-カルニチンという2種類の成分が検出されたという報告を受けて、「一般の人々は、15歳という年齢の子供に、なぜ心臓の治療薬が1種類だけでなく、3種類も必要なのかと思うだろう」とカトリンは述べた。

かなり無理なこじつけ

2021年の調査で、ポーランドの処理済み廃水サンプルからトリメタジジンを含む微量の医薬品が検出されたことをカトリンは指摘した。また、米環境保護庁の発表では、処理済み廃水で灌漑された作物が医薬品に汚染される可能性があることが示されている。

「少し前に、アメリカの陸上選手のキス事件に取り組んだ」と、カトリンは付け加えた。「この選手は過失のないことが認められ、処分が撤回された。陽性反応が出たのは、選手の恋人が禁止成分の入った風邪薬を服用したせいだった。恋人はカプセルを飲むことが苦手だったため、カプセルから薬を取り出して口のなかに入れて飲み込んだ。その後、選手と熱いキスを交わした。それが原因で、禁止成分が体内に入った、と選手は主張した」

しかし、祖父の薬が原因だというワリエワの弁明は、かなり無理のあるこじつけに思える、とカトリンは言った。

「この場合、テーブルの表面やコップの中にわずかな薬の残留物があったとしても、それが薬物検査で検出されるような量の摂取につながる可能性は極めて低いと考えなければならない」

<追記>CNNなどの最新の報道では、薬物の効果を最大限に引き出すために15歳のワリエワが3つの薬物を組み合わせて飲むとは考えにくく、周囲の大人が関与した疑いが強いとしている。


ニューズウィーク日本版 トランプ関税15%の衝撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月5日号(7月29日発売)は「トランプ関税15%の衝撃」特集。例外的に低い税率は同盟国・日本への配慮か、ディールの罠

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米特使がガザ訪問、援助活動を視察 「食料届ける計画

ビジネス

ドル・米株大幅安、雇用統計が予想下回る

ビジネス

米労働市場おおむね均衡、FRB金利据え置き決定に自

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中