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「もう親でも子でもない」 ミャンマーの新聞、反体制派に向け家族が絶縁状を掲載

2022年2月11日(金)11時59分
ミャンマーの国軍に殺害された人々の写真

ミャンマーではここ3カ月、国営の新聞では、息子や娘、おいやめい、孫との絶縁を宣言する家族からの通知が毎日6、7件も掲載されている。この国を支配する軍事政権に公然と反対しているというのがその理由だ。写真は、タイのメーソットにある人権団体の政治犯支援協会の事務所で、ミャンマーの国軍に殺害された人々の写真。1月26日撮影(2022年 ロイター/Soe Zeya Tun)

ミャンマーではここ3カ月、国営の新聞では、息子や娘、おいやめい、孫との絶縁を宣言する家族からの通知が毎日6、7件も掲載されている。この国を支配する軍事政権に公然と反対しているというのがその理由だ。

これほどの頻度で「絶縁通知」が掲載され始めたのは昨年11月。民主的に選ばれた政権を、同2月のクーデターで倒して実権を握った国軍が、反対勢力の資産押収や抗議参加者を匿う者の逮捕を発表したことがきっかけだった。発表からまもなく、一般家庭を対象とした強制捜査が何十件も行われた。

ロイターでは約570件の絶縁通知を確認したが、そうやって両親から縁を切られた子どもの1人が、車のセールスマンを辞め、軍事政権に抵抗する武装グループに参加したリン・リン・ボー・ボーさん(26)だ。

両親のサン・ウィンさん、ティン・ティン・ソーさんが11月、国営紙「ザ・ミラー」に掲載した通知には、「リン・リン・ボー・ボーとの親子の縁を切ることを宣言する。両親の意見をまったく聞こうとしないからだ」と書かれていた。

ミャンマーを逃れて国境に近いタイの街で暮らすリン・リン・ボー・ボーさんは、ロイターの取材に対し、兵士らが彼を逮捕しようと実家を捜索したことを受けて、母親から絶縁を告げられたと語った。数日後、新聞に掲載された通知を目にして涙を流したという。

「仲間たちは、軍事政権からの圧力を受けているのだから家族がそうするのは仕方がない、と私を元気づけようとした。それでも、とても傷ついた」

両親にも取材を試みたが、コメントは拒否された。

反体制活動家の家族をターゲットとする戦術は、2007年や1980年代末の動乱の際にもミャンマー軍事政権が用いたやり方だ。だが人権団体幹部のワイ・フニン・プウィント・ソン氏によれば、2021年2月1日のクーデター以降はその頻度が圧倒的に増えているという。同氏は、ビルマ・キャンペーンUK(ビルマは旧英国植民地であるミャンマーの旧名)で啓発担当上級役員を務めている。

同氏によると弾圧への対策として家族との絶縁を公式に表明することは、ミャンマーの文化の中で長い伝統があり、そうした通知がメディアに掲載される例が増えているという。

「犯罪に関わり合いになることを家族は恐れている」と同氏は述べた。「逮捕されるのは嫌だし、トラブルには巻き込まれたくない」

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