最新記事

北京五輪

中国共産党が五輪で手に入れたアメリカ育ちの広告塔アイリーン・グー(谷愛凌)の輝ける前途

U.S.-Born Eileen Gu Calls China 'Homeland' After Winning Gold in Beijing

2022年2月10日(木)19時45分
ジョン・フェン

「幼い頃は、毎年夏に北京に帰ってきていた」とも語り、2008年に北京で夏季五輪が開催された時は5歳で、北京の国家体育場(通称「鳥の巣」)で陸上の3000メートル障害を見たことを振り返った。

「祖国で競技に参加することができて、とても嬉しい」とグーは語った。

グーは秋から米スタンフォード大学に通うことが決まっているが、中国の高級品市場に詳しいアメリカのサイト「ジンデイリー(Jing Daily、精奢商業日報)」は8日付の記事で、オリンピックが終わった後も、中国における彼女の影響力は続くだろうと指摘。グーは「マーケターの夢」であり、中国の政府とファッション、両方のブランドにとって理想的なアンバサダーになり得ると示唆した。

これまでもモデルとしてルイ・ヴィトンやビクトリアズ・シークレットの広告に登場しているグーだが、今後は多くの中国企業からも誘いがあるだろうと同サイトは予想する。「中国でセレブ文化が取り締まりの対象となるなか、グーがセレブを起用するブランド戦略にとっての『救世主』になるだろう」

「雪上のプリンセス」はセレブの模範

その意味では、共産党の汚職摘発機関であるCCDIのインタビュー自体が意味深だ。CCDIは2021年12月にも、台湾系アメリカ人の人気歌手ワン・リーホン(王力宏)が元妻に、乱れた女性関係や精神的虐待などを暴露されたスキャンダルを例に挙げ、セレブ文化を批判した。

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストの報道によればCCDIは、「最近の有名人のスキャンダルは、有名人の言動は世間の大きな注目を集め社会に影響を及ぼすものだということを改めて証明した」と指摘。「これらのスターたちは、自制しなければ尊敬を得ることはできない。悪い行いをすれば、いずれその代償を払うことになる」

だが、今では中国国民から「雪上のプリンセス」と呼ばれているグーなら見通しは明るそうだ。「今後も論議を呼ぶような言動を避け、北京冬季五輪で金メダルを獲得すれば、グーはほぼ確実に数百万ドルの稼ぎを手にすることになるだろう」とジンデイリーは予想していた(そして金メダルを獲得した)。

ビッグエアの競技を終えた後の会見で、グーは記者団に対し、中国代表として大会に参加した選択に満足しているし、懐疑的な見方をする人々のことは無視するつもりだと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格、6月前年比+2.6%に加速 前月比+

ビジネス

再送-トランプ大統領、金利据え置いたパウエルFRB

ワールド

キーウ空爆で8人死亡、88人負傷 子どもの負傷一晩

ビジネス

再送関税妥結評価も見極め継続、日銀総裁「政策後手に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中