最新記事

パキスタン

妊婦の頭に5センチ釘を打つ「代替医療」の顛末

'Sorcerer' Hammered Nail Into Pregnant Woman's Head To Guarantee a Son

2022年2月10日(木)16時25分
サマンサ・ベルリン
妊婦イメージ

南アジアの国のなかには、男の子を望むあまり危険な手段にすがる女性が今もいる(写真はイメージ) damircudic-iStock.

<ネットに上がったレントゲン写真で発覚。次も女の子だったら離婚すると夫に脅されて妊婦が頼った先は>

パキスタンで妊娠中の女性の頭に長さ5センチの釘を打ったとして、警察が呪術師の行方を追っている。

北部ペシャワールの警察署のツイッターによれば、署長が事件を知ったのは8日のこと。女性のレントゲン写真がソーシャルメディアで話題になったのがきっかけだった。女性は男の子を産ませて欲しいと呪術師に依頼し、釘はそのためだったという。

署長はAFPの取材に対し、「呪術師はすぐに捕まえる」と述べたという。

南アジアの多くの国では、女の子より男の子の誕生を望む傾向にある。パキスタン医科学誌に掲載されたペシャワールに住む女性へのアンケート調査の結果でも、女の子より男の子が欲しいと答えた人が半数以上を占め、娘は1人も欲しくないと答えた人も約18%いた。

女性を診察した病院の医師は地元紙ドーンに対し、女性は意識はあるが痛みを訴えており、出血もひどいと語った。女性の家族が自宅で釘抜きを使って釘を抜こうとしたものの抜けず、病院を受診したという。

「家族によれば、自宅で意識を失ったそうだ」と医師はドーン紙に語った。

病院で頭蓋骨から釘を抜く手術

医師によれば、釘は脳には刺さっておらず、手術により頭蓋骨から無事、引き抜くことができたという。

女性は医師に対し、知人が同じように妊娠中に頭に釘を刺してもらったところ、超音波検査では女の子だと思われていたのに男児を出産したと話したという。

女性はすでに退院した後で、警察は監視カメラの映像や病院のコンピューターに残されたデータからその行方を追っている。呪術師逮捕につながる情報を得るためだ。

「捜査チームはまた、治療に当たった医師がなぜ警察に通報しなかったかについても調べることになる」と警察はツイートで述べている。

ドーン紙は病院の話として、女性は妊娠3カ月で3人の娘がいると伝えた。もし4人目も女の子なら離婚すると夫から脅されていたらしい。

離婚を怖れた女性は間違いなく男の子が産めるようにと呪術師を頼ったようだ。

呪術師の手を借りてでも男児を産もうとする女性は少なくない。パキスタンではこうした呪術師は聖者として扱われ、特に農村部では比較的身近な存在だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、大麻規制緩和案を発表 医療用など使用拡大も

ビジネス

資本への悪影響など考えBBVAの買収提案を拒否=サ

ワールド

原油先物は堅調、需要回復期待で 週間ベースでも上昇

ワールド

ガザで食料尽きる恐れ、ラファ作戦で支援困難に=国連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中