最新記事

ゼロコロナ政策

北京五輪参加者に忍び寄る肛門PCR強制の恐怖

China Uses Anal Tests To Detect Omicron As COVID Variant Spreads Before Winter Olympics

2022年1月20日(木)15時47分
ジョン・フェン
北京のPCR検査

五輪へ向け厳戒態勢の北京の通りでPCR検査を受ける女性(1月17日) Thomas Peter-REUTERS

<北京五輪開幕直前にオミクロン株の市中感染という最悪の事態を迎え、中国の保健当局は肛門PCRの実施を指示した。以前、日本やアメリカの外交関係者が巻き込まれて抗議したこともあるが、肛門PCRは中国ゼロコロナ政策の重要な柱になりつつある>

中国の保健当局は新型コロナウイルス感染症を検知するために、賛否はあるがより正確な結果が得られる、肛門から検体を採取するPCR検査(肛門PCR検査)の導入を指示している。冬季五輪の開催を控えた北京市で、1月19日までに、感染力の高い変異ウイルス「オミクロン株」への感染者3人が確認されたことを受けての措置だ。

北京では15日に、オミクロン株の初の感染者が確認された。北京市政府系メディア「新京報」によれば、感染が確認された女性が暮らしている共同住宅では、少なくとも27件の肛門PCR検査が実施された。

中国では2020年から、北京や上海をはじめとする主要都市で肛門PCR検査が導入されてきた。北京では昨冬、数百万人の市民に対して、鼻や喉から検体を採取して行う検査や抗体検査と組み合わせて、肛門PCR検査が実施された。肛門PCR検査は、より大規模なクラスターを追跡する上では実用的ではないとされている(数人分の検体を一度に検査する「プール方式」の方が適している)が、より正確な検査結果が得られると考えられている。

「見逃しを減らせる」が不快

北京佑安医院の感染症専門家である李侗曾は2021年1月、国営テレビの中国中央電視台(CCTV)に対して、肛門PCR検査は無症状や軽症の感染者を検知するのに効果的な方法だと語っていた。

無症状や軽症の感染者は比較的回復が早いため、「感染から3~5日が経過すると喉にウイルスの痕跡が残っていない可能性がある」と彼は述べ、「一部の感染者については、気道にウイルスの痕跡がなくなった後も、消化管や排泄物の中にウイルスが残ることが分かっている」と説明。肛門PCR検査は不快感を伴うものの、ウイルスの検出率がより高くなり、感染者の見逃しを減らせる可能性があると述べていた。本誌は今回、改めて李にコメントを求めたが、返答はなかった。

2021年前半には、アメリカと日本の複数の外交官に対して、この肛門PCR検査が実施され、心理的な苦痛が大きいとして中止を求める声も上がった。しかし中国では、「ゼロコロナ政策」を維持する上で、同検査が重要な役割を果たしている可能性がある。

2021年12月には、深圳市第三人民医院(広東省)の蔡侃儒をはじめとする計8人の医師が、中国の医学雑誌に論文を発表。肛門PCR検査を支持し、広く導入するよう提言した。

彼らは症状のある患者31人から採取した46の検体を比較。その結果、鼻から検体を採取する検査方法は、感染後の全経過において、新型コロナウイルスの検出率が低かった。感染後16日以降に実施したPCR検査では、肛門からの検体採取検査で陽性反応が出た患者のうち、鼻からの検体採取検査で陽性反応が出た人は28.6%と、3分の1に満たなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中