最新記事

常識検定

[シン常識検定] 世界でもっとも多くの学生を海外に送り出している国はどこでしょう?

2022年1月20日(木)12時30分
一田和樹

jousiki20220120cc.jpg

2017年の段階で海外で学んでいる中国の留学生はおよそ93万人(在籍数)だった。 このうち、2017年に中国から海外へ留学した学生は60万8400人(渡航数)であ る。どちらも世界最多となっている。在籍数では2位はインド(33万人)、3位はドイ ツ(12万人)となっており、2位以下を大きく引き離していることがわかる。


中国の影響下にある一帯一路参加国の留学生数も合計すると、その圧倒的な規模から 世界の高等教育を変容させるとまで言われている。

日本の状況を見ると、中国から大きく引き離されているだけではなく、隣国の韓国と比べても海外留学生の数は少ない。

海外で学んでいる日本の学生は約3万人で中国の31分の1だ。中国と日本の人口比は2017年の時点で13.8億 対 1.3億なのでおよそ10分の1、人口比を勘案しても3倍以上の開きがある。

隣国の韓国が海外に送り出している学生の数は世界4位の10万人で日本の3倍以上だ。 韓国の人口は約0.5億人なので人口当たりでは日本の8倍になる。また中国が受け入れている海外からの学生では韓国がもっとも多く、韓国の留学先としても中国がトップだ。なお、2020年の時点で韓国は一帯一路には参加していない。

一帯一路構想でも教育支援には力を入れている。教育支援を行う相手国の発展状況に合わせたプログラム(後発開発途上国向けのSilk Road Education Assistance Programなど)、高等教育(Silk Road School、丝路学院)あるいは職業訓練(LubanWorkshops、 鲁班工坊)といった目的に合わせたプログラムが用意されている。中華人民共和国教育部によれば、その目的は3つある。

1.人的結びつきの強化(Promote Closer People-to-People Ties)
2.一帯一路で必要となる能力の育成(Cultivate Supporting Talent)
3.参加国との協力による教育水準の向上(Achieve Common Development)

一帯一路参加国以外の各国の大学や教育機関との提携も進めており、英語検定試験IELTSで知られるイギリスのUK-China-BRI Country Education Partnership Initiativeを始めとして47の提携を結んでいる。

また、2020年の時点でメディアやジャーナリストへのトレーニングを過去5年間に75カ国で行っており、中国から見た世界観の普及に努めている。

中国は全方位にわたって自国の優位性を確立、維持するための施策を次々と打ち出しているのである。


204,203,200_.jpg最新! 世界の常識検定』(集英社文庫)

●一田和樹
経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。09年1月より小説の執筆を始める。10年、長編サイバーセキュリティミステリ「檻の中の少女」で島田庄司選 第3回ばらのみち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。著書に『原発サイバートラップ』『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』など。当ウェブでコラム「デジタル権威主義とネット世論操作」連載中。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、新たな相互関税率は8月1日発効=ホワイトハウス

ワールド

米特使、イスラエル首相と会談 8月1日にガザで支援

ビジネス

エヌビディア「自社半導体にバックドアなし」、脆弱性

ワールド

トランプ氏、8月8日までのウクライナ和平合意望む 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中