最新記事

日本社会

高齢者の職場にこそ求められる「働き方改革」

2022年1月13日(木)19時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

上記の2つの変数をクロスすると、現実がよりリアルに分かる。「5×12」の60のセルができるが、各々に該当する人数(全数あたりの割合)をドットの大きさで表したグラフにすると<図1>のようになる。

DATA220113-CHA02.jpg

高齢層で最も多いのは、フリーランスの農林漁業だ。全体の7.8%、13人に1人に該当する。日本の農業は、こうした自営の高齢者で支えられている。次に多いのは非正規の運搬・清掃職で、その次は同じく非正規のサービス職だ。これは日々の生活でよく目にする。会社の経営(管理)に携わる役員・事業主はおよそ5.8%。

おそらく事務職を希望する人が多いだろうが、高齢層では正規の事務職は全体の3.2%、非正規を合わせても6.7%しかいない。ハローワークで事務職の求人を検索しても、ヒットがほぼ皆無であるのはよく言われることだ。デスクワークが多くなったというが、高齢層に限ると現業職がマジョリティであることが分かる。高齢層の労災も、こういう業種で多発している。

ホワイトカラーを希望しつつもそれが叶わず、不慣れな肉体労働を始める高齢者が多いのだろうが、無理は禁物だ。職場においても、従業員の高齢化に合わせた「働き方改革」が求められる。店舗で辛そうな顔をして立っているシニアスタッフを見かけるが、座って勤務してもいい。屋外労働者用のファン付きウェアや、介護士向けのアシストスーツといったテクノロジーも活用するべきだ。

無人店舗などの普及も進んでいるので、未来では働く人が国民の4割、いや3割でも社会が回るようになるかもしれない。日本の高齢者の就業率は高いが、同じく高齢化が進んでいるドイツの65歳以上の労働力人口率は7.8%、イタリアは5.1%、スペインは2.5%でしかない(2019年)。少ない労働力で社会を回している国は多い。この違いはテクノロジーをどれほど活用しているか、サービスの質をどれほど下げることができているか、にもよるだろう。

国民の多数が死ぬまで働かないといけない社会になるかは分からない。だが超高齢社会の到来に合わせ、働き方の質を変えなければならないのは確かだ。

<資料:総務省『国勢調査』(2015年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

現代自、米国生産を拡大へ 関税影響で利益率目標引き

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中