最新記事

中国

北京五輪を目前にオミクロン株と中国ゼロコロナの壮絶な戦い

Omicron March on Beijing Strains China's Zero-COVID Policy Before Olympics

2022年1月12日(水)18時19分
ジョン・フェン
北京「鳥の巣」

コロナの感染を防ぐため、フェンスで囲まれた北京五輪の会場(2022年1月11日)Pawel Kopczynski- REUTERS

<これまで全住民検査に厳しいロックダウンという強硬手段でコロナを抑え込んできた中国政府にとって、謎に包まれ感染力が強いオミクロン株はかつてない強敵だ。しかもゼロコロナの成功には習近平の威信がかかっている>

2月4日の北京冬季五輪開幕まで約3週間。北京では、市の保健当局が安全性確保に躍起になるなか、約2000万人が中国で最も厳しいコロナ対策の下で生活している。

中国の中央保健当局である国家衛生健康委員会(NHC)は、国内で発生している4カ所の大きな感染拡大を確認し、監視している。そのうちデルタ株のクラスター感染が発生したのは陝西省西安市と河南省禹州市で、人口1400万人以上の西安市は無期限に封鎖されている。

1月10日には、北京の南東130キロに位置する港湾都市天津で、感染力が従来のウイルスの何倍も強いといわれるオミクロン株の感染が確認され、同市は部分的にロックダウンされた。同日、同じ河南省の安陽市でもオミクロン株による感染が確認され、市当局は完全なロックダウンを発表した。

中国は依然として感染者ゼロをめざす「ゼロコロナ」政策を堅持している世界でも数少ない国の一つだ。人口の約85%がワクチン接種を完了しているが、起源がわからないオミクロン株の感染急拡大は、ウイルスの完全撲滅をめざす政府の厳しいアプローチに最大の試練をもたらしている。中国政府は国内の批判と国外からの疑問の目にも関わらず、この戦略を擁護し続けてきた。

市民生活に厳しい制限

この冬のコロナ感染急拡大を1月31日の旧正月休暇と2月4日の冬季五輪開始の前に克服するために、中国は膨大な量の財政と人的資源を費やし、パンデミックの初期に行われた最も厳しい公衆衛生措置の一部を再び活用している。

人口1400万人の天津市では、ロックダウン、コントロール、予防という3つのカテゴリーの公衆衛生対策が適用されている。第1に、住民は自宅から出てはならない。第2に、買い物のための外出は、2日ごとに各世帯で1人のみ認められる。第3に、外出先は近所に限定される。

市当局者らは北京市の「安全」を守るために、市の周囲に「堀」をめぐらせることを求めている。今週、市全体でPCR検査が始まり、公共交通機関は止まり、学校や大学は閉鎖されている。市を出る際の規制も厳しくなり、住民が市の外に出るときは、PRC検査の陰性証明書の提示だけでなく、企業や自治組織からの承認が必要だ。

約500キロ離れた安陽市の住民550万人は、さらに厳しい規制の下で暮らしている。新年の前に天津から戻った大学生のオミクロン株感染が判明した後、すべての交通機関がストップし、北京への直通バスと列車の路線が停止した。中国の国営放送CCTVの報告によると、これはオミクロン株の感染が少なくとも2週間前から市内で発生していたことを示しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ハンガリー首相と会談 対ロ原油制裁「適

ワールド

DNA二重らせんの発見者、ジェームズ・ワトソン氏死

ワールド

米英、シリア暫定大統領への制裁解除 10日にトラン

ワールド

米、EUの凍結ロシア資産活用計画を全面支持=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中