最新記事

女性問題

こんなイスラム女性たちがアプリで「競売」されている ITの進化が女性に危機をもたらす

2022年1月11日(火)17時47分

オーストラリアの活動家、ノエル・マーティンさんは、こうした虐待が感情や心理に与える影響は、体への虐待と「同じくらい辛い」ものであり、ネット上のコンテンツの拡散性、公共性、永続性により打撃が増幅されると述べた。

マーティンさんは17歳のとき、自分の加工ポルノ画像がネット上に載っているのを見つけた。画像による虐待に抗議する運動を進め、オーストラリアの法改正にも貢献した。

しかしマーティンさんによると、被害者の声はなかなか届かないという。

「テクノロジーによる虐待の被害は、物理的な要素を伴う虐待に比べてリアリティーがなく、深刻でもなく、致命的な結果を引き起こす可能性はないという危険な誤解がある」

「被害者は、こうした誤解のせいで、声を上げ、支援を求め、司法にアクセスすることがより難しくなっている」と言う。

競売は嘘でも迫害は本物

こうした画像を加工している者を、個人が1人で追跡するのは難しい。また、IT(情報技術)プラットフォームは匿名ユーザーの隠れみのとなりがちだ。こうしたユーザーは偽の電子メールやSNSのプロフィールを簡単に作成することができる。

議員でさえ例外ではない。昨年11月には米共和党のゴサール下院議員がSNSに、自身が民主党のオカシオコルテス下院議員を殺害するアニメ動画を投稿し、下院が問責決議を行った。

EndTABのダッジ氏は「新しい技術が出るたびに、それがいつ、どのように悪用され、ネット上の未成年・成年女性に危害を加える武器になるのかを即刻考えるべきだ」と訴えた。「ITプラットフォームによって、オンライン虐待の被害者側にひどく不利な環境が生み出されてしまった」とし、現実世界で被害を受けたときに助けを求める従来の方法は、ネット上の虐待ではそれほど利用できないと説明した。

行動を起こしたIT企業もある。鍵や財布に付けることができる位置特定装置「エアタグ」が女性の追跡に使用されているという報道を受けて、米アップルはユーザーのプライバシーを保護するアプリを立ち上げた。

一方、インドではオークションを偽るアプリに掲載された女性たちの動揺が収まっていない。

今回容疑者が逮捕されたアプリに画像が載ったジャーナリストのイスマット・アルアさんは「これはオンラインハラスメントそのものだ」と述べた。

やはり画像がこのアプリに載ったアルファ・カーナム・シェルワニさんはツイッターにこう投稿した。「オークションは偽物かもしれないが、迫害は本物だ」

(Rina Chandran記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中