最新記事

BOOKS

道路を渡り切れない老人は日本に300万人以上、その理由

2022年1月28日(金)19時55分
印南敦史(作家、書評家)

だが、「自分の親のことは自分がよく分かっている」「自分の親のことなのだから、子どもが面倒を見なくてはならない」「自分のことをよく分かっている子どもたちに面倒を見てほしい」というように、支援に消極的な人もいる。もちろん家族のことを家族がいちばん理解しているのは事実だが、そこに執着するのは、本人や家族にとって必ずしも幸せではないだろう。


 なぜなら、特に高齢者の身体機能の維持には、専門職の意見は欠かせません。
 ほとんどの人が、初めての介護になる一方で、いろいろな高齢者の身体を見てきた人の知見は、必ず役に立ちます。(60ページより)

さらに言えば、介護する家族の人生も、同様に大切な人生。介護が負担になって追い込まれるような事態になるのを避けるためにも、介護保険制度を利用するべきだという。

幸いにして私の母は、85歳とは思えないほど矍鑠(かくしゃく)としている。しかしそれでも最近は、階段を登るのが少し苦しそうだ。年齢を考えれば当然だが、今後はこれまで以上に身体機能を見守っていく必要があるかもしれない。明日の母が、昨日と同じ母とは限らないのだから。

本書を読んだ結果、当たり前なものとしてすぐ近くにあった現実を見る目にも、少し変化が生じてきた気がする。


道路を渡れない老人たち
 ――リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる』
 神戸利文、上村理絵 共著
 アスコム

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。新刊は、『書評の仕事』(ワニブックス)。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、年初のアフリカ歴訪開始 戦略的に重要な東

ワールド

イエメン分離派指導者が逃亡、リヤド行き便に搭乗せず

ワールド

中国、航空機リースや医療でアイルランドとの協力深化

ワールド

中絶禁止は州憲法違反、米ワイオミング州最高裁が無効
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中