最新記事

中国

『中国の民主』白書と「民主主義サミット」

2021年12月14日(火)16時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

だから12月6日、中国の外交部は『アメリカ民主の状況』と題した白書を発布した。アメリカの民主は金権政治であり、一人一票と言いながら実際は少数エリートが統治しているにすぎず、民主は混乱し崩壊していると酷評している。

白書はまた以下のようなことを列挙している。

──たとえばトランプ(元大統領)支持派による議会乱入事件、黒人差別をやめることができない激しく長い人種差別社会の慣行、激しい貧富の格差、コロナ感染をコントロールできない惨劇、有名無実の言論自由、民主を広めるという名目により朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争・・・と数多くの戦争を繰り返してきた。民主を口実にした無用の戦争によりどれだけ多くの無辜の民の命を非人道的手段により奪ってきたか。しかもアフガニスタンにおける戦争と占領により、他の民族国家に対する強硬な民主の押し付けは失敗に終わったことを歴史は証明している。アメリカがなぜ世界に次から次へと戦争を仕掛けるかは、政権は軍事産業を味方につけておかないと成立しないからだ。軍事産業で製造された武器をさばくために戦争を仕掛けている。その時に使うのが「民主主義のため」という虚偽の正義に過ぎない。最近では制裁を乱用して国際ルールを破壊していることも含めて、アメリカの民主の、人類に対する罪は重い。(以上概略と趣旨を紹介。)

このように、白書の口調は激しい。

今年6月に、習近平政権は胡錦涛政権の白書のリニューアル版である『中国新型政党制度白書』を出しているが、そういったトーンとは異なり、実に攻撃的だ。

この『アメリカ民主の情況』白書は、どこからどう見てもバイデン大統領が提起した「民主主義サミット」に対抗したものであるとみなすことができる。

バイデン政権主催の「民主主義サミット」は中国に痛手か?

しかし、その肝心の「民主主義サミット」だが、対中包囲網としての効果があっただろうか?

サミットはおよそ110の国と地域の代表を招いて12月9日から2日間にわたってオンラインで開催された。ということは、おおよそそれと同じ数に相当する国が「非民主主義国家だ」として招かれなかったことになる。

中国やロシアを専制主義国家の代表とするのは分かるにしても、シンガポールといった国まで「非民主主義国家」と区分されており、アフリカ54ヵ国の内、招かれたのはわずか17ヵ国。残りの37ヵ国が「非民主主義国家」に分類されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独当局、ディープシークをアプリストアから排除へ デ

ビジネス

アングル:株価急騰、売り方の悲鳴と出遅れ組の焦り 

ワールド

焦点:ウクライナ、対ロシア戦の一環でアフリカ諸国に

ビジネス

ECB、インフレ目標達成へ=デギンドス副総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 10
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中