最新記事

中国

中国ゼロコロナ政策は「コロナの煉獄」 米、香港紙などが批判

2021年11月10日(水)19時00分
青葉やまと

厳しい国外の視線 「コロナの煉獄」

しかし、国外の目は厳しい。米CNNは環球時報の記事公開と日を同じくして、「中国のゼロ感染への執念が、いかに同国を『コロナの煉獄』に変えるか」と題する動画を公開した。

動画は、世界でも有数の高いワクチン接種率を誇る日本やオーストラリアなどがウィズコロナ路線を歩みつつあるとし、対比する形で中国路線の特殊性を論じている。ゼロコロナで成功を収めていたニュージーランド、オーストラリア、シンガポールなどでさえ、デルタ株以降は方針を転換する柔軟な姿勢をみせている。

ナレーションは「このウイルスが最初に検出された中国は、この地域でいまだゼロコロナを追求する唯一の国である」「北京オリンピックが間近に迫るにもかかわらず、規制がすぐに緩和される様子はまったくみられない」とし、対応に疑念を示す。北京五輪まで3ヶ月を切っている。

香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙も、ゼロコロナ路線を転換すべきとの立場だ。同紙記事は「ウイルスが順応した今、中国ゼロコロナの目標は可能性ゼロ 複数の専門家が指摘」との見出しを掲げる。

2004年にSARS第2波の防止に尽力した感染症の専門家などが同紙に対し、SARSとは異なり新型コロナは人間社会に定着しているなどとの見解を明かしている。いま目指すべきはウイルスの完全排除ではなく、(中国製)ワクチンの抗体レベルの減少を把握するための大規模な検査だ、と専門家らは指摘する。

デルタ株の封じ込めは可能か

入念な感染防止対策にもかかわらず、局地的なアウトブレイクが中国の広い地域で繰り返している。ブルームバーグは、中国は過去5ヶ月ほど第4波に見舞われており、半数以上にあたる20の行政区で新規感染者が報告されていると報じている。日ごとの新規感染者数は全土で100人前後と大きくないものの、ゼロコロナへの道は険しい。

CNNは、「にもかかわらずウイルスは急速な拡がりをみせ、ゼロコロナの持続性に疑問を投げかけている」と述べる。中国では感染ピークの到来間隔が短くなり、ピーク期間も長期化する傾向にあることから、当局の感染対策自体の有効性にも疑問符がつくとの指摘だ。

ゼロコロナは、経済面でもリスクを伴う。独コメルツ銀行のアナリストらは米CNBCの取材に対し、中国がゼロコロナに固執するならば、すでに電力危機で弱体化している中国経済がさらに下振れしかねないと警告している。

市民生活に大きな犠牲を強いるゼロコロナ路線は果たして実を結ぶのか、動向が注目される。

China steps up zero-tolerance approach to Covid-19 as Delta fears grow ahead of Beijing Olympics

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中