最新記事

遺跡

マヤ文明の遺跡400ヶ所、空からの測量で一挙発見 日本人考古学者率いる米チーム

2021年11月4日(木)18時11分
青葉やまと

調査チームは、英科学誌ネイチャーに掲載された2020年当時の論文のなかで、「我々が知る限り、これはマヤ一帯で発見されたうち最古の儀礼用の建造物であり、この地域のプレヒスパニック期(スペインが征服する以前の時代)を通じて最大のものです」と述べている。

ガーディアン紙は「マヤ文明最古かつ最大の構造物が発見された」と報じ、「総体積では古代エジプトのギザの大ピラミッドを凌ぐ」と伝えている。

LIDARが変える考古学調査

猪俣教授は「水平方向にとても大きいため、(遺跡の)上を歩いても、ただの自然の風景のように思えるでしょう。しかしLIDARによって、その姿をはっきりと確認できるのです」と、その有効性を語っている。LIDARは自動運転車が周囲を認識する手法として利用されているが、考古学においても大きな前進をもたらしている。

CNNは昨年、台地の発見を報じた記事のなかで、LIDARなどのリモート・センシング技術は「革新的存在」だと伝えている。

記事は米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のパトリシア・マカナニー教授(考古学)によるコメントを引用し、「一回の飛行で得られるLIDAR画像は、数十年にわたる従来の考古学調査を超える情報をもたらすことがあります」としている。鉈で森を切り拓きながら進む従来のフィールドワークとは、効率の点で大きな差を生んでいる。

ただし、より詳細な調査には、現地での発掘作業が欠かせない。今後の考古学調査のあり方としては、マヤ文明誕生の地といわれる広大なマヤ低地のなかから遺跡が集中する地点をLIDARで絞り込み、そのうえで集中的に現地調査を行うスタイルが主流となるかもしれない。

アリゾナ大学が発表したリリースのなかで猪俣教授は、「この現場の発掘を続け、(当時の社会階級など)こうした疑問への答えを見出すのには、さらに長い時間を要することでしょう」と述べ、研究はまだ始まったばかりだとの認識を語った。

478 Olmec & Maya Sites Found by LIDAR in Mexico

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事、0.50%利下げ改めて主張 12

ワールド

米航空各社、減便にらみ対応 政府閉鎖長期化で業界に

ビジネス

米FRBの独立性、世界経済にとって極めて重要=NY

ビジネス

追加利下げ不要、インフレ高止まり=米クリーブランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中