最新記事

模倣作

中国ストリーミング大手、『イカゲーム』模倣疑惑で炎上

2021年10月25日(月)14時58分
青葉やまと

『イカゲーム』のポスター wikipedia

<あからさまに類似した番組名に、テーマもほぼそのまま借用。中国国内からも呆れ声が>

Netflixで異例のヒットを飛ばすデスゲーム作品『イカゲーム』に、あからさまな模倣作が登場した。中国アリババ傘下で配信大手のヨウク(优酷)が、『イカゲーム』ならぬ『イカの勝利』と題したバラエティ番組を企画していたことが判明し、炎上している。

ヨウクは10月20日、新番組『イカの勝利』の番組内容とポスターを公開した。ポスターのビジュアルと番組コンテンツが人気作を非常に強く意識した内容となっており、中国国内で批判が噴出している。

ポスターは黒の背景に白字で、番組名である『魷魚的勝利』の文字が踊る。タイトルが意味するところは、「イカの勝利」だ。番組ロゴはオリジナル作に似せたポップな書体となっているほか、ピンクのマル・バツ・サンカクのマークを盛り込んでいる。これは、イカゲームのストーリー内で繰り返し使用されているモチーフだ。

Screen-Shot-2021-10-22-at-7.55.52-AM-696x296.png

オリジナル作(左)にモチーフが似た中国・ヨウクのポスター(右)

ヨウク版の番組内容は、子供時代に親しんだ懐かしい遊びを、大人たちが大掛かりに再現するものとなっている。バラエティ番組でありジャンルこそ違えど、本家イカゲームとほぼ同じテーマをもとにしている。

中国では原則としてNetflixを視聴することができないが、人気コンテンツは違法ストリーミングサイト経由で消費されることが多い。本件もオリジナル版を視聴した人々が類似性に気づき、批判の先鋒となったものとみられる。

批判を受けヨウクは、Weiboへの投稿を通じて公表当日中に謝意を表明した。同社は「技術的ミス」により、本来公開すべきでない初期段階のデザインが公表されてしまったと説明している。番組名からイカを除いた『勝利のゲーム』に改題し、マルやバツなどのシンボルを排除した新たなロゴデザインに差し替えた。

中国国内の反応は

人気作への便乗行為に対し、恥ずべき行いだとする認識が中国国内で高まっている。香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙(以下「SCMP」)は、Weiboユーザーたちから同社の番組に対し、「露骨なひょう窃」「恥ずべき行為」などの批判が集中していると報じた。

初期案が公開されてしまったという説明についても、多くのユーザーが見え透いた口実だと受け止めたことで、新たな火種となっている。

SCMP紙の一部の読者は、模倣はエンタメ業界の常であるとして擁護する立場だ。ある読者は「誰もがコピーしており、最大の模倣者はハリウッドであるが、ハリウッド作は『リメイク』と呼ばれる」とし、アイデアの模倣がここまで問題にならないことも多いとする見解を披露した。

一方、中国の模倣文化の新たな例だとして呆れる声も聞かれる。同紙へのあるコメントは、「トレーシング・ペーパー......あらゆる中国の『発明家』の最も重要なツールのこと」と揶揄する。

別の読者は、今回の模倣作が中国国内からも厳しく糾弾されていることを受け、次のようにコメントした。「タイトルさえ変えずに何かをコピーするとは、なんという恥知らずなのだろう? 中国の人々にとってさえ受け入れ難いほどやり過ぎてしまったということだろう。」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反発、アマゾンの見通し好感 WBDが

ビジネス

米FRBタカ派幹部、利下げに異議 FRB内の慎重論

ワールド

カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブルージェ

ビジネス

NY外為市場=ドル/円小動き、日米の金融政策にらみ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中