最新記事

比ドゥテルテ、支持率急落 奇策の副大統領出馬が憲法違反の疑い

2021年9月30日(木)18時20分
大塚智彦
フィリピンのドゥテルテ大統領批判のデモ

フィリピンのドゥテルテ大統領への批判の声が高まっている Eloisa Lopez - REUTERS

<トップからナンバーツーを目指す男。その真の狙いとは?>

2022年のフィリピンの大統領選挙で副大統領選への出馬を決めたドゥテルテ大統領への国民の支持率が低下している。同国の民間調査機関「パルス・アジア」による世論調査の結果明らかになったもので、地元マスコミも一斉にその結果を伝えている。

ドゥテルテ大統領は2016年の大統領就任後、麻薬取締対策などで強硬とも非難された手法で辣腕を振るい、国民からは常に80%前後という高い支持率を誇ってきた。それがここにきて急に低下傾向を示し始めているのだ。

その人気下降の一番の背景には2022年5月に行われるフィリピンの次期大統領選挙に副大統領として出馬することへの反発があるのは間違いないとされている。

フィリピンでは憲法の規定により、大統領の任期は「1期6年」と決められており、再選は禁止されている。このためドゥテルテ大統領は次期選挙に大統領として出馬することは憲法違反となるため不可能だ。

そこでドゥテルテ大統領が名誉総裁を務める最大与党「PDPラバン」から指名を受ける形で副大統領への立候補を決める、「奇策」ともいえる出馬となった経緯がある。

憲法違反の可能性も指摘

ところが出馬直後からその「奇策」に対して学者や国会議員の中から「大統領経験者の副大統領出馬には憲法上問題が残る」との指摘が相次いだ。

これまでフィリピン史上、大統領経験者が副大統領に就任した前例はない。もしドゥテルテ大統領が副大統領選で勝利して就任した場合、就任そのものは憲法違反とはならない。

しかし、副大統領在任中に新たに選ばれた大統領が健康上の理由や死亡、弾劾など何らかの理由で「大統領としての職務を履行することが困難になった」場合、副大統領がその職務を継ぐことになっており、そうなると「大統領の再選禁止規定」に抵触し、憲法違反になるというのだ。

副大統領候補としての支持率14%

「パルス・アジア」は9月6日から11日にかけて2400人を対象にした世論調査を実施。その結果、副大統領候補としてのドゥテルテ大統領の支持率は14%。同じく副大統領に出馬を表明しているソト上院議員は支持率25%でトップとなり、ドゥテルテ大統領は2番手に甘んじる結果となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、中国にイランへの働きかけ要請 ホルムズ

ビジネス

米国株式市場=上昇、FRB当局者の利下げ発言を好感

ワールド

米下院議長、対イラン軍事制限法案の採決拒否 米軍基

ワールド

米・イラン対立激化懸念高まる、トランプ氏支持率低下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中