最新記事

動物

リス一匹一匹に性格があった 「大胆なリス」「社交的なリス」...米研究で解明

2021年9月29日(水)17時00分
青葉やまと

リスにもさまざまな個性があった spoonworks-iStock

<野生のリスに、大胆さや社交性など4つの軸で分類できる性格が。生き方や生存率などに影響するという>

すばしっこく野山を駆け回ったり、餌を見つければ頬袋に詰め込んで愛らしい表情を披露したり。リスといえばこんなイメージが強いが、実は一匹一匹にさまざまな個性があるようだ。最新の研究者によると、そのタイプは4つの軸で分類できるという。

研究を行なったのは、米カリフォルニア大学デービス校(UCデービス)で野生動物の生態学を研究するジャックリン・アリパーティ博士らのチームだ。チームは3年を費やし、中部コロラド州のロッキー山脈で野生のリスを観察・研究した。この高地にはロッキー山脈生態学ラボが運営されており、周囲を大自然に囲まれた環境のなかで、30年以上に渡って野生生物の研究が行われている。

チームが研究対象に選んだのは、なかでも北米の山間いで広くみられるキンイロジリスだ。個体ごとにどれだけ近づけるかを試したり、新しい環境への適応性を観察したりといったテストを行った。結果、リスたちは「大胆さ」「活動レベル」「攻撃性」「社交性」の4つの主だった特徴について、個体ごとに違った傾向を示すことがわかった。これらはエサの発見や繁殖などの行動にも影響を与えているとみられる。

研究成果は論文として発表され、9月10日付で動物行動科学の学術誌『アニマル・ビヘイビア』に掲載された。

リスの個性、どうやって測った?

動物の性格とは何とも数値化しづらいように思えるが、アリパーティ博士たちはどのように実験を進めたのだろうか? チームは実験にあたり、現在標準化が進んでいる4つの行動テストを採用した。1つ目は「新環境」テストと呼ばれるもので、野生のリスを用意された箱のなかに入れて反応を観察する。箱の床には人工的な罫線が引かれ、さらにリスの体の大きさほどの穴が空いている。穴のなかをどの程度探索するかなどを観察し、見慣れぬ環境に置かれた際の大胆さと活動レベルを判定した。

2つ目は鏡を見せる「ミラー」テストだ。リスは鏡像を自身だと認識できないため、鏡越しに他の個体がいるような状態となる。このテストでの反応から、他者に対する社交性と攻撃性を推定することができる。

このほか、野外において人間がどのくらいの距離まで近づけるかを計測する「逃避自発性」、傷つけないよう配慮された罠で捕らえ反応を短時間観察する「トラップ内行動」とあわせ、計4つのテストにより特性を数値化していった。

大胆なリスほどエサを得やすいが......

観察を進めるにつれ、リスの個体ごとに違った個性があり、さらにこの個性が行動パターンや生存率などに影響しているらしいことがみえてきた。

例として大胆さの指標が高いリスほど、活動の中心となるコアエリアが広い傾向にある。また、大胆かつ攻撃性もあるリスでは、移動速度が速いことが確認された。こうした個体はより広い縄張りを確保でき、より多くの餌にありつく可能性が高い。反面、危険を顧みない行動によって天敵に見つかってしまったり、事故に遭ってしまったりする危険性が上がることとなる。

さらに、大胆・攻撃的・活動的と3要素が揃うリスは、岩など見晴らしの良い地点に好んで滞在する傾向が出ている。このような地点は天敵を見つけ出すのに最適であるため、こうした積極的な性格のリスは生存競争において利点があるはずだと研究チームは考えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中