最新記事

フィリピン

大統領立候補のパッキャオ、正式引退 フィリピンが誇る世界的プロボクサー

2021年9月28日(火)17時30分
大塚智彦

2016年には一度現役引退を表明したものの数か月後にそれを撤回して現役復帰戦で勝利したこともあり、今回の引退表明も「また現役復帰するのではないか」とリングに再び立つ雄姿を期待する国民も多かった。そうした背景からパッキャオ氏の「引退表明」の真意が国民の関心事となっていた。

パッキャオ氏のボクサーとしての最後の試合は2021年8月に米ラスベガスで行われたWBA世界ウェルター級王者ヨルデニス・ウガス選手との対戦で、パッキャオ氏が判定負けを喫している。試合後にパッキャオ氏は引退もささやかれながらも「1月に帰ってくることは可能だ。考える」としてリベンジマッチの可能性を否定しなかった。

パッキャオ氏のプロボクサーとしてのこれまでの戦績は72戦62勝(39KO)8敗2分となる。

大統領候補として立候補

引退表明に先立つ9月19日にパッキャオ氏は最大与党「PDPラバン」の一部会派から大統領候補としての指名を受け、これを受けていた。指名受諾演説でパッキャオ氏は「私はリングの中での外でもファイターである。私たちは貧困との闘いに勝たなくてはならない」と大統領への意欲をみせていた。

大統領選にはこれまでに俳優出身のマニラ市のイスコ・モレノ市長、マルコス元大統領の長男フェルナンド・マルコス・ジュニア(愛称ボンボン・マルコス)前上院議員、元警察幹部のパンフィロ・ラクソン上院議員が名乗りを上げている。

このほか再選禁止規定で大統領選に出馬できない現職のドゥテルテ大統領がパッキャオ氏と同じ政党「ラバン」の支持派から副大統領候補として出馬を決めている。

フィリピンでは映画俳優出身のジョセフ・エストラーダ氏が大統領(1998年~2001年)を務めたことがあるように政治家以外の人物が国民の人気と支持で当選する土壌があることから、パッキャオ大統領誕生も現実味を帯びている。

パッキャオ氏は引退表明の中で「私は今後フィリピンのボクサーを支援していきたい。そうすることで次のチャンピオンが出てくる」として後進のボクサーの指導にあたりたいとの希望も明らかにしている。

愛称が「パックマン」のパッキャオ氏が今後のフィリピン大統領選の台風の目になるのは間違いないだろう。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

チリ、国連総長候補バチェレ元大統領の支持撤回 政権

ワールド

シェルCEO、欧州のエネルギー不足「来月にも」 影

ワールド

米、キーストーンXL一部復活計画の許可巡りカナダと

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、AIの投資判断を一部容認
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下位になった国はどこ?
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 6
    スペイン王室、王妃と王女の装いに見る「母から娘」…
  • 7
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 8
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 9
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中