ウイグル弾圧を「テロ対策」と呼ぶ中国の欺瞞を、世界は糾弾せよ
China's “War on Terror"
新疆ウイグル自治区で反テロ作戦の訓練を行う中国軍 China Stringer Network-REUTERS
<世界的なテロへの恐怖と強硬姿勢を逆手に、中国共産党が自らの弾圧を正当化して見せた巧妙なレトリック>
自由なメディアのおかげで、中国共産党が私たちの民族に、今まさに行っている大虐殺が大いに注目されるようになった。中国西部の新疆ウイグル自治区に暮らすテュルク系諸民族の一員、ウイグル人のことだ。この話題に触れたウイグル人ジャーナリストは実際に故郷の家族が迫害を受けているため、私も名前を伏せざるを得ない。
だからこそ、ウイグル人の窮状を詳細に報道してきたワシントン・ポスト紙が8月、中国共産党によるウイグル人虐殺を対テロ政策と称したことに、ひどく困惑させられた。中国だけでなく世界的にも、弾圧をテロ対策に仕立て上げることがいかに成功しているかという一例である。
記事は中国の研究者や専門家の言葉を引用して、タリバンの手に戻ったアフガニスタンが「東トルキスタンイスラム運動(ETIM)を含むイスラム過激派グループの避難所になることを、中国当局は懸念している」と述べている。
問題は、ETIMが「テロ組織」かどうかだけでなく、存在するかどうかさえ、疑わしいと指摘されていることだ。
ETIMは、ワシントン・ポストの記事が言うように中国の安全保障にとって恐ろしい脅威では、決してない。中国共産党がアメリカの対テロ戦争を利用して、新疆ウイグル自治区での長年の抑圧政策を正当化するために、「鬼がいる」と誇張しているのだ。
政治的なレッテル貼りは、中国共産党が反対分子をつぶす伝統的な手段でもある。中華人民共和国の建国以来、無数の人々が「右派」「社会帝国主義者」「走資派(資本主義の道を歩む実権派)」と名指しされて、迫害され追放され、あるいは死に至った。
分離独立は裏切り行為
新疆ウイグル自治区に対する「分離主義者」のレッテルは、独立運動は最悪の裏切り行為だと反射的に考えるように訓練された中国国民の怒りをかき立てたが、他の国々にはほとんど響かなかった。
しかし、2001年を機に、中国共産党ははるかに効果的な手法を編み出した。
すなわち、分離独立戦争を世界的な対テロ戦争の一環と位置付け、ウイグル人の民間人と治安部隊の自然発生的で組織化されていない衝突を、組織化されたテロ行為と見なす。それによって自分たちの民族弾圧を、欧米が自由の名の下に行う対テロ戦争と連携させたのだ。
「テロリスト」は、強力で非人間的な言葉になった。グアンタナモ米軍基地でも、自治区のウルムチの反体制デモも、このレッテルを貼られた人々は、人権や適正手続きから自動的に排除された。
テロリストのレッテルがいかに曖昧で不正確であっても、それを貼られた人々の権利を剝奪しようと、世界中が躍起になった。中国はそれを見逃さなかったのだ。
9・11テロの後、中国はすかさず国連とアメリカに働き掛け、ETIMをテロ組織に指定させることに成功した。