最新記事

日本社会

フルタイムでもワーキングプア......非正規公務員の7割が年収200万円未満

2021年9月15日(水)13時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

お店のパートとは違い、公務員となると非正規も労働時間が長い。専門的な業務も多く、無給の残業をしている非正規雇用者も多いだろう。それにもかかわらず年間所得は200万円、地域によっては150万円にも達しない。ブラック労働撲滅の旗振りをする「官」の世界でこのような現状とは、開いた口がふさがらない。役所の非正規職員は、今は会計年度任用職員という呼称で、ボーナスが支給されるなど待遇改善も進んでいるが、まだまだ不十分であることは政府も認めている。

ちなみに、図書館司書・学芸員の非正規率は高い。<図1>は性別と従業地位で分割した組成図だが、非正規が全体の55%を占める。ジェンダーの問題も絡んでいて、生涯学習の現場は(安い)女性非正規で支えられていることが分かる。

data210915-chart02.png

少子高齢化が進む中、柔軟な働き方を否定するものではない。ワークシェアリングを進め、一人あたりの勤務時間を減らすのも悪くないが、普通の生活ができる給与が得られるという条件つきだ。「正規・非正規」という日本独特の区分は廃止し、職務内容や労働時間に応じて給与が決まる制度に変える時期に来ている。目下、それと最も隔たっているのが「官」の世界であるとは皮肉なことだ。

改革が必要なのはデータでも明らかだ。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)
    総務省『国勢調査』(2015年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正マネタリーベース、国債買入減額で18年ぶり減少

ビジネス

テスラ、10月の英販売台数が前年比半減 欧州諸国で

ワールド

ジャマイカ、最強ハリケーン被害は現時点で60億-7

ビジネス

イーライリリーとノボ、薬価引き下げと保険適用拡大で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中