最新記事

アメリカ社会

ドラァグクイーンと子供のふれあいイベントが抗議殺到で中止に、殺害予告も

Drag Queen Show at Children's Museum Canceled Due to 'Threats of Violence'

2021年7月30日(金)17時45分
エマ・メイヤー
LGBTQ+のイベント

LGBTQ+のイベント(21年6月、ロサンゼルス) Aude Guerrucci-REUTERS

<ドラァグクイーンが子供たちに絵本の読み聞かせをするイベントに、暴力的な脅迫が殺到。安全上の懸念から中止に>

米ネブラスカ州リンカーン市にある子供博物館は7月26日、予定されていた「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」を中止すると発表した。これはドラァグクイーンが、子供たちに絵本の読み聞かせをするイベントだが、中止の理由は「暴力的な脅迫が殺到したこと」だった。

子供博物館のインスタグラム投稿によれば、このイベントは数週間前から予定されていたもので、7月31日(土)の閉館後に参加希望者だけに向けたイベントとして行われる予定だった。つまり、博物館の公式なプログラムではなかった。

「リンカーン子供博物館と、イベント主催者のアウト・ネブラスカ(OutNebraska)にはこの数日間、暴力を示唆する脅迫が殺到しており、そのなかには殺害の脅迫も数多く含まれている」とインスタグラム投稿には書かれている。

地元のLGBTQ+擁護団体であるアウト・ネブラスカはイベント主催者の一つだが、こちらにも多くの脅迫が来ているという。子供博物館はイベント中止の理由として、リンカーンのコミュニティーに属する人々によって「もたらされた安全上の懸念が増大したこと」を挙げた。

子供博物館は、「このイベントを中止し、子供たちが私たちの施設で、遊びの力を通じて創造、発見、学習できないことをとても残念に思っています」と続けている。「しかし、すべての来場者やスタッフ、展示、建物の安全は、今もこれからも、私たちの優先事項です」

過去にも反発や脅迫を受けてきた

アウト・ネブラスカのエグゼクティブディレクターであるアビ・スワッツワースは本誌に対し、同団体の「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー」は4年前に始まったものだが、こうした反発を受けるのはこれが初めてではないと説明した。

ただし、「これまでも、憎悪に満ちたコメントや、遠回しな脅迫を受けたことはあったが、これほどのレベルの脅迫は予想していなかった」という。

ドラァグクイーン・ストーリー・アワーについてスワッツワースは、「LGBTQ+の家族が一緒に博物館を楽しみ、多様性の受け入れや共感、優しさについての物語を聞くための貸し切りイベントだった」と述べている。だが、フェイスブックのコメントやメッセージ、さらにボイスメールで多くの脅迫が寄せられたという。

リンカーンのレイリオン・ゲイラー・ベアード市長はツイッターで、「人々の生命を政治的に利用することは決して許されない」というコメントを発表した。「リンカーン警察はすべての脅迫について捜査している。そして、LGBTQの友人、隣人へ。あなたがたは#LNK(リンカーン)で愛され、歓迎されていることを知ってほしい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中