最新記事

日本社会

なぜ日本男子は世界で唯一、女性より幸福度が低くなるのか?

2021年7月28日(水)20時00分
本川 裕(統計探偵/統計データ分析家) *PRESIDENT Onlineからの転載
幸せな女性(右)と不幸な男性(左)

世界では『女性・高齢・低学歴の者ほど幸福度が低い』が、日本人はこれにすべて反しているという。Ranta Images - iStockphoto


「幸福度」を国別・男女別にみると、先進国や発展途上国を含むほとんどの国は女性のほうが男性より低い。一方、日本は逆に男性のほうが低い。統計データ分析家の本川裕氏は「OECDの統計を分析すると、世界のスタンダードは『女性・高齢・低学歴の者ほど幸福度が低い』が、日本人はこれにすべて反している」という――。


世界の中で日本人の幸福度は低いのか高いのか

本連載で以前、「男女格差ランキング120位は本当? 「女性が差別される国」日本で男より女の幸福感が高い皮肉」というテーマを扱い、反響が大きかった。

今回はこの時とは別のデータを使い、やはり日本人の幸福度は、世界の傾向とは反対に女性の方が高い点を示すとともに、男女別だけでなく、年齢別、学歴別といったその他の属性でも日本人の幸福度は世界の傾向に反していることを紹介することにしよう。

本題に入る前に、まず、「日本人の幸福度は全体として高いのか低いのか」という点について確認しておこう。

OECD(経済協力開発機構)の幸福度白書の最新版(「How's Life? 2020」)では、旧版と同様、幸福度を構成するさまざまの指標のひとつとして主観的幸福度(Subjective Well-being)のデータを掲載している。

私は、幸福度を論じる場合、幸福を左右すると思われる所得や生活環境、災害などに関するさまざまな指標を総合化して判定する方法では、どんな指標を使うかウエイトづけから恣意的になりがちなので、むしろ、この主観的幸福度そのものを重視すべきだと考えている。

同白書によれば「OECDのガイドライン」は主観的な幸福度の測定方法として以下の3つを区別している(※1)。

①生活評価(生活満足度など生活の全体評価)
②感情(喜怒哀楽など、機嫌の良し悪し)
③ユーダイモニア(Eudaimonia)(人生の意味や目的、生きがい)

※1 同白書では、①として0~10までの段階別に答えさせた「生活満足度」、②として回答者の感情状態から作成した「ネガティブ感情度」のデータを掲げ、分析を行っている。①では日本や米国は該当する公式統計がないので比較対象から除外されている。③は国際比較できる高品質データがないとしてそもそも非掲載である。
 

まず、「日本人の幸福度の程度は」という疑問を解くために、4月7日の記事でも使った世界価値観調査の「幸福感」(※2)と、OECD幸福度白書が掲載している「ネガティブ感情度」(※3)という両方のデータで幸福度の各国比較を試みることにしよう。

※2「幸福かどうか」の設問に「非常に幸せ」及び「やや幸せ」と答えた割合の計 ※3 調査日前日の感情状態についてネガティブな回答(怒り、悲しみ、恐れなど)がポジティブな回答(くつろぎ、喜び、笑う、など)を上回っている割合を指し、ギャラップ世界調査の結果からOECDが算出
 

日本人の幸福度は、韓国やコロンビア、ポーランドなどよりも低い

図表1には、OECD諸国の幸福度ランキングを「幸福感」と「ネガティブ感情度」の両方で示した(※4)。後者では、指標値の低いほうが幸福度は高く、指標値の高いほうが幸福度は低いと解した。

chart01.jpg

※4 一般に、先進国と途上国では事情や背景が大きく異なるので、生活レベルが一定水準以上の先進国だけで比較したい場合、先進国クラブと称されるOECD諸国のランキングが用いられることが多い。OECD諸国に関しては、統一基準で収集されたデータベースが整備されていて、相互比較の信憑性が高い点もOECD諸国比較が多用される一因となっている。ここでもそうした点を考慮してOECD諸国のデータを用いている。もっとも、最近、OECDの新規加盟国が増え、メキシコ、コロンビアといったラテンアメリカやスロベニア、エストニアといった東欧圏に属する必ずしも先進国とは言えない国々も含まれるようになっているので、その点にも分析上の配慮が必要である
今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、3会合連続で金利据え置き 今後の道筋示さず

ビジネス

米メタ、250億ドルの社債発行へ 最長40年債も=

ビジネス

エヌビディアCEO、サムスン・現代自会長と会談 A

ワールド

イスラエル軍、ガザで新たな攻撃 ハマスは人質2遺体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中