最新記事

中国共産党

中国共産党100周年式典は、習近平ただ1人を礼讃するイベントと化した

CCP Now All About Xi

2021年7月5日(月)16時30分
メリンダ・リウ(本誌北京支局長)

国政選挙が存在しないため、党幹部は往々にして経済発展を正統性の証しと見なす。設立記念日を控えた6月には、四川省・成都で2つ目の国際空港が開港し、チベット自治区初の高速鉄道も開業した。

こうした話題に脚光が当たる一方で、歴史問題の公式見解に否定的な言動を取り締まるネット検閲については、それほど取り上げられない。

新疆ウイグル自治区での人権侵害や、国家安全維持法施行による香港支配の強化に対する国際社会の批判もしかりだ。共産党に批判的な香港の日刊紙、 蘋果日報(アップル・デイリー)が6月24日付で廃刊されたことを受けて、ジョー・バイデン米大統領は「報道の自由にとって悲しむべき日」と発言した。

2012年に党総書記に就任して以来、習は汚職、政敵や政治的反対派の一掃に乗り出し、驚異的速度で権力を掌握してきた。毛に並ぶ指導者として自身を位置付け、毛と同じく権力の座にしがみつき、「68歳定年」の慣例を破って最高意思決定機関である政治局常務委員会のメンバーを続投するとみられている。

党の基本方針の1つとして推進する「習近平思想」によって、毛に次ぐレベルの個人崇拝の対象にもなっている。

「イデオロギーが復活した」と、ロンドン大学東洋アフリカ学院・中国研究所のスティーブ・ツァン所長は指摘する。「『習近平思想』は国家の指針となるイデオロギーだ。それを理解しなければ、100周年記念行事の意味を見逃すことになりかねない」

個人崇拝のアキレス腱

中国にとって来年は政治的駆け引きに満ちた年になるだろう。そのクライマックスが、秋に開催予定の中国共産党第20回全国代表大会(党大会)だ。通常5年ごとに開かれる党大会は、次の指導者の育成戦略がまとめられる(べき)場であり、次期指導部の人事が発表される場でもある。

習体制の下、国家主席の任期は18年に撤廃された。習が後継者指名を先送りにしつつ、兼務する党総書記や中国共産党中央軍事委員会主席の座を維持できるか。今や、それこそが大きな問いだ。

権力移行プロセスを担う担当者は、強権的支配と安定を確保する一方で、秩序だった権力継承の実現を迫られるジレンマを抱えている。

2つを両立させるには、優れた手腕と並んで、運とタイミングが不可欠だ。昨今の事例が示すように、政権交代は欧米の民主主義国でも混乱を引き起こすことになりかねない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中