最新記事

米政治

アメリカ二大政党制が迎えた限界...ついに第三政党の躍進へ機は熟した

IT’S TIME TO PARTY

2021年7月2日(金)17時54分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

とはいえ二大政党は資金・人材共に豊富。ボランティアのネットワークも全米各地に張り巡らされているし、長年引き継がれてきた献金者・有権者名簿を票固めに活用できる。

それでも適切な候補者を立て、適切な政策パッケージを掲げて、賢いマーケティングを行えば、第三政党が二大政党の集票マシンに打ち勝てる可能性はあると、多くの専門家はみる。急進左派とトランプ主義者が対峙する状況になれば、なおさらだ。

そのためにはさしずめ今なら、幅広い層に受ける経済政策を声高にアピールすること。最低賃金の引き上げ、教育への政府支出の拡大、メディケア(高齢者医療保険制度)の適用範囲を若干広げることなどだ。

一方で保守・リベラルが真っ向から対立する問題については、漠然とした中道の立場を目立たない形で打ち出すのが得策だ。

争点を争点化しない戦略を

例えば産む産まないを選ぶ女性の権利は認めるが中絶できるのは妊娠何週目かまでと限定する、銃の所有は認めるが購入時のチェックは厳格化する、警察の改革を進めるが予算は減らさない、移民の受け入れは制限するが、幼少時に保護者と共に入国した若年層への救済措置は維持するなど。

第三政党が支持を伸ばすには、こうした問題を「争点化させないよう巧みに扱う」べきだと、ハーバード大学ケネディ行政大学院のトーマス・パターソン教授は言う。「白人至上主義者のようなトーンにならずに、法と秩序を語ることはできる」

ジョリーとキャンベルも中間選挙と大統領選に向けてそうした戦略を練っている。キャンベルの党はまず州議会での議席獲得を目指しているが、カリフォルニア州議会選に候補者を立てるには最低7万3000人がコモンセンス党の党員として有権者登録をする必要がある。

210706P52billclark_DST_02.jpg

新政党SAMを率いる元共和党下院議員のジョリー Bill Clark-CQ Roll Call/Getty Images

「コロナ禍以前には月1万人の登録を集めていたが、中断を余儀なくされた」と、キャンベルは言う。感染拡大が収まり、登録者集めを再開したそうだ。

同党は州内の80選挙区中7区に候補を立てる予定。全てで勝てれば、州議会で大半の法案の成否の鍵を握ることはできる。その後は他州の議会にも進出し、ゆくゆくは連邦レベルの選挙に打って出る計画だ。全米に顔を知られる議員を何人か出せれば、党の信頼度が上がりそれなりに影響力も持てる。

一方、SAMを率いるジョリーは「今は有権者が民主、共和、第三政党に三分割されやすい状況だ」とみて、有望な層に的を絞った運動を展開するつもりだ。「顔の売れた候補者を看板にして党のブランドを確立する。やるべきことはそれだけだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル大統領、G7サミットに参加へ カナダが招待

ワールド

米、対中55%関税維持 中国との合意後も「変更なし

ビジネス

米5月CPI2.4%上昇、前月からやや加速 関税措

ワールド

トランプ関税、高裁審理中は維持へ 差し止め一時停止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 5
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 6
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 7
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 8
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 9
    みるみる傾く船体、乗客は次々と海に...バリ島近海で…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 9
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中