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バイデンの真価が問われる5つの課題、最大の敵は中国ではない

BATTLE FOR THE SOUL OF THE NATION

2021年7月21日(水)17時52分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

まだ法案が可決されると決まったわけではないし、細部の交渉がさらに半年以上長引く可能性もある。だがこの法案が成立すれば、コロナ対策の米国救済計画と合わせて総額2兆9000億ドルの巨大事業になる。これは第2次大戦後最大の景気刺激策だ。

■地球温暖化対策

バイデンは地球温暖化を人類の存亡に関わる脅威と認識していて、政府の全ての行動と提案を温室効果ガス排出削減と結び付けるよう指示している。

地球温暖化対策と雇用創出は両立するというのが、バイデン政権の立場だ。インフラ整備計画は、それを実現するための最初の一歩にすぎない。

米政府は、2030年までにアメリカの温室効果ガス排出量を05年の水準より50~52%減らす計画を発表。35年までに、電力部門の脱炭素化を実現する目標も掲げている。洋上風力発電設備を大幅に拡大する計画も打ち出した。

■平等な社会の実現

今日のアメリカ社会が直面しているとりわけ深刻な問題の1つが経済的な不平等と人種による社会の分断だと、バイデンは考えている。

そこで、この2つの問題を是正するための動きも見せている。まず、経済的な不平等に関しては、大学の学費問題に関する提案が目立つ。

アメリカの大学生と大学卒業生はしばしば、高額の授業料を支払うために多額の借金を抱えている。それに、そもそも大学に進学できるほど経済的余裕のない人も多い。この問題を緩和するために、バイデンは、1人当たり最大1万ドルの学費ローン債務の免除や、コミュニティー・カレッジ(公立の2年制大学)の学費無償化などの対策を打ち出している。

人種問題に関しては、バイデンは何十年も前から、人種間の正義の重要性を訴えてきた政治家だ。それに、昨年の大統領選で勝利する上では、黒人有権者の支持が大きな後押しになった。

そうした背景もあって、バイデンは人種差別解消のために、賃金、住宅ローン審査、高等教育を受ける機会の格差是正などを約束している。

■対中政策と同盟関係

バイデンは、中国の台頭を国際システムへの深刻な脅威と考えている。そこでその脅威に対処するために、同盟国との関係を立て直し、国連やWTO(世界貿易機関)のような国際組織を強化しようと努めている。アジアの国々、とりわけ日本との関係強化もさらに推し進めるはずだ。

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