最新記事

クーデター

混迷深まるミャンマー スー・チー裁判は長期化、反軍政の武力抵抗は激しさ増す

2021年6月30日(水)21時31分
大塚智彦

ミン・ミン・ソー弁護士によると28日の公判に出廷したスー・チー氏は、健康状態もよく、同じくコロナ禍への十分な対応不足で訴追されて、身柄を拘束されている民主政権のウィン・ミン大統領に対する証人尋問にも立ち会ったという。

そして、今後の裁判で全ての容疑で有罪判決が下された場合、スー・チー氏さんの服役する刑期は最低でも10年以上になるといわれている。

これは「民主的な選挙」を2年以内に実施することを表明している軍政として、総選挙そしてその後のミャンマー政治からスー・チー氏ら民主政権関係者を完全に排除し、その影響力を消滅させることを狙っているといえるだろう。

激化する軍への武装抵抗

スー・チー氏への裁判が長期化する中、反軍政を掲げる国民の軍への武装抵抗はヤンゴンや中部の都市マンダレーなど地方でも激しさを増している。

6月27日午後1時ごろ、マンダレーの南西にあるザガイン地方カレイ郡区で兵士50人を輸送中だった軍の車列を地元カレイの「国民防衛隊(PDF)」が待ち伏せ攻撃をして、少なくとも兵士9人を殺害、多数に負傷を負わせた。

PDFは軍政に対抗するためにスー・チー氏やウィン・ミン大統領など民主政権幹部、スー・チー氏の与党「国民民主連盟(NLD)」幹部、少数民族代表からなる「国民統一政府(NUG)」が中心となって組織した武装組織で、軍による反軍政を訴える国民への強圧的弾圧、人権侵害などに武力で対抗する目的で全国的に組織された経緯がある。

PDFへの軍事訓練、武器供与、共同作戦などで協力している国境地帯に展開する少数民族武装組織も軍の拠点や軍車両に対する攻撃を激化しており、軍兵士、警察官、軍政支持者、密告者などへの襲撃、殺害事件も相次いでいる。

このように軍政が民主政権の影響力を封じ込めようとする動きを強化しようと努力しても、反軍政の機運は一向に収まる気配が見えない。

むしろ逆に軍への強い反発、軍制への拒否感が高じて、各地で武器を手にした一般市民による武装闘争が激化、兵士らの犠牲が増える事態となるなどミャンマー情勢はますます混迷の度を深め、実質的な内戦状態になりそうな状況だ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-米FRB、年内1─2回の利下げ

ワールド

北朝鮮、2月下旬に党大会開催 5年に1度の重要会議

ビジネス

米紙ワシントン・ポスト発行人が退任、大規模人員削減

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 6
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 7
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中