最新記事

軍事

英海軍がリモート操縦船の実証実験に初成功...時代は「タブレットの中の戦争」へ

High-Tech Navy Ship Piloted Using a Laptop and a Tablet From Ashore

2021年6月4日(金)19時04分
スー・キム
英海軍の空母クイーン・エリザベス(2017年)

英海軍の空母クイーン・エリザベス(2017年) Peter Nicholls-REUTERS

<無人の船が海戦を戦う時代がやってくる? 船舶を高速で遠隔操縦できることの戦術的な意味は大きい>

イギリス海軍は6月1日、自律型船舶「MADFOX(MAritime Demonstrator For Operational eXperimentation)」のリモート操縦に初めて成功したと発表した。3月に公開されたハイテク実証船MADFOXにとっては「画期的な成果」だ。

MADFOXはこれまで、乗船した船員によって運航されてきた。しかし英海軍の声明によれば、今回のテスト運航は「海上を見渡せる浜辺に設置されたテントにいる船員2人が、ノートパソコン1台とタブレット端末1台」を用いて実施したという。場所は、英南東部ハンプシャー州にある港湾都市ゴスポートのブラウンダウン・ビーチだ。

テスト運航では、陸上からの船舶操縦が可能かどうかが検証された。また、ハンプシャー州と、イギリス海峡に浮かぶワイト島のあいだを流れるソレント海峡を行き来する船舶の監視が可能かどうかも確認された。

英海軍は6月1日、公式ツイッターで次のように投稿した。「船員たちは、海岸から英海軍の自律型運航船を操縦した。MADFOXにとって画期的な瞬間だった。海軍の技術開発チームNemesisは、将来的な実用化を目指して、無人船の実証実験を行ってきた(安全のために乗船者はいた)」

また、次のような声明も発表された。「この船や同種のシステムが、将来的に英海軍の船舶とともに配備され、軍隊の保護から監視業務にいたるさまざまな任務遂行で活用されることを期待している」

「戦術的な重要性を高める」

ツイートにもあるように今回のテスト運航では、安全対策として船員が乗船したが、実際の船舶の動きや速度、進行方向については、陸上にいる船員がリモートで操作した。

操縦した船員は、自律型運航船に搭載されたセンサーやカメラから得られるライブ映像や情報を把握して判断する技術を習得した。自律型運航船には、離れたところを運航する別の船舶に乗っている人々を識別できる「高解像度ズーム」機器なども搭載されているという。

英海軍は声明でこう述べている。「陸上に設置された船舶操縦の拠点から、実証実験が行われた海上を見渡すことができた。このシンプルな配置は、それ自体が未来へとつながるものだ。こうした拠点は、次世代フリゲート艦の26型や31型などに組み込まれることになる」

船舶向けの最新技術の開発を行う専門家チーム「ネイビーX」責任者の海軍中佐アントニー・クラブは「公園の池でラジコンボートを操縦するようなものだと思われるかもしれない」と語る。「しかし、今回の実証実験は画期的な成果だ。これで海兵隊員は、離れた船舶を高速運航できるという自信が得られる」

「われわれはこれまで艦船に乗船して監視を行ってきたが、これとは異なるやり方だ。このところ実施してきた一連の試みで得られた教訓をもとに、さらに複雑な任務を構成し、今後の実証実験に組み込んでいくことになる。そうしたプロジェクトは、将来のハイブリッド的な艦隊を形成するのに役立ち、戦術的な重要性を高めていくことになる」

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-トランプ氏、原油高抑制策を検討

ワールド

トランプ氏、米地上部隊のイラン派遣巡る決定には「程

ワールド

情報BOX:G7、緊急石油備蓄の放出を検討 各国の

ワールド

仏、地中海・紅海へ海軍艦艇約12隻を派遣 同盟国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 8
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 9
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 10
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中