最新記事

感染症

ロシアで鳥インフルエンザの鳥からヒトへの感染が確認される......新たなパンデミックの懸念

2021年5月31日(月)18時03分
松岡由希子

広島・三原市で確認された高病原性鳥インフルエンザ(2020年10月) Kyodo/REUTERS

<ロシアで、鳥インフルエンザウイルス「H5N8亜型」が初めて鳥からヒトへの感染が確認された>

ロシア当局は2021年2月18日、高病原性鳥インフルエンザウイルス「H5N8亜型」が7人の臨床検体から検出されたことを世界保健機関(WHO)に通知した。このウイルスの鳥からヒトへの感染が確認されたのは初となる。なお、ヒトからヒトへの感染は現時点で確認されていない。

日本や韓国、ロシアや他の欧州諸国、米国、など、46カ国以上で確認

「H5N8亜型」は、2010年に中国江蘇省の生鮮市場(ウェットマーケット)のアヒルから初めて分離された。2014年までに、日本や韓国で、家禽や野鳥の「H5N8亜型」への集団感染が発生したほか、これまでにロシアや他の欧州諸国、米国、カナダ、インドなど、46カ国以上で確認されている。

2020年12月、ロシア南部アストラハン州の養鶏場で「H5N8亜型」への集団感染が発生し、12月3日から11日までに採卵鶏90万羽のうち10万1000羽が死んだ。

ロシア国立ウイルス学・生物工学研究センター(VECTOR)がその対応に当たった養鶏場の作業員から臨床検体を採取し、検査した結果、29歳から60歳までの7名が陽性と診断された。数週間の経過観察期間中、陽性者はいずれも無症状であり、この期間に改めて採取した検体での検査では陰性となった。また、家族や他の作業員ら、陽性者の濃厚接触者からは、明らかな臨床症状は認められなかった。

中国・山東第一医科大学の史伟峰教授と中国疫病預防控制中心(CCDC)主任の高福博士は、2021年5月21日、学術雑誌「サイエンス」で「H5N8亜型」に関する見解を発表。

「H5N8亜型」が種の障壁を超えてヒトを含む哺乳類にも感染したことが確認されたことから、「このウイルスが新たなパンデミックをもたらすおそれがある」と警鐘を鳴らす。

養鶏場や生鮮市場での標準的な感染防止策の徹底を

パンデミックのリスクを未然に防ぐ対策としては、養鶏場、生きた動物を販売する生鮮市場、野鳥などのサーベイランス(監視)を行う、養鶏場や生鮮市場での標準的な感染防止策を徹底する、野鳥を狩猟して食べたり、むやみに野鳥と接触しないなど、個人レベルで感染予防策を実践することなどが推奨されている。これによりウイルスの拡散を遅らせ、ワクチンを開発する時間を稼ぐことができると指摘している。

Russia Reports First H5N8 Bird Flu Cases in Humans

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席、5年ぶり訪欧開始 中仏関係「国際社会のモ

ワールド

ガザ休戦交渉難航、ハマス代表団がカイロ離れる 7日

ワールド

米、イスラエルへ弾薬供与停止 戦闘開始後初=報道

ワールド

アングル:中国地方都市、財政ひっ迫で住宅購入補助金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中