最新記事

東アジア

台湾有事になれば、日本はどこまで介入すべきか...アメリカは何を求めてくる?

What the US Wants From Japan

2021年5月19日(水)17時59分
ジェフリー・ホーナン(米ランド研究所研究員)

アメリカは、ミサイルなどを用いて日本の空と海を防衛する際に日本に支援を求めるかもしれない。日本の領土と戦闘地域の間でアメリカの船舶と航空機の護衛任務を武装した自衛隊に頼むこともあるだろう。つまりアメリカは台湾周辺での戦闘において日本に武力行使を用いた支援を求めることがあり得るのだ。

一方、アメリカが何を求めようと、日本の関与は常に政治的判断となるだろう。日米共同声明に台湾を明記することを菅政権が了承した際、同政権はすなわちそれが、台湾海峡の「平和と安全」が損なわれれば日本が何らかの関与をするという意思表示だと理解していたはずだ。

もし日本が何もしない、もしくは期待外れの支援しかしない場合には、日米同盟が揺るがされるだけでなく、アメリカを中心とした世界の同盟関係そのものに疑問符が付くことになる。

この状況を回避できる前向きな兆候もある。例えば、日本政府は台湾海峡有事の際に自衛隊が取るべき対応について複数のシナリオを検討していると言われる。さらに、4月下旬の日経新聞の世論調査では、台湾海峡の安定に関与することを支持すると答えた人は74%に上った。

日本政府は、武力行使を法的枠組みに基づいて判断する傾向にあり、それによって日本の対応は変わる。もし中国が台湾を攻撃すればアメリカは迅速な関与を模索するだろうが、日本の対応にありがちな、行政上のさまざまなハードルをクリアしていくやり方では刻一刻と変わりゆく作戦展開に付いていけない。

日本の政治決断がアメリカのスピードに付いていくには、日本は今のうちから有事に際してアメリカが何を要請してくるかを知る必要がある。日米が台湾海峡の平和と安定への支援を表明した今、両国は有言実行のための現実的なプランを練るべきだ。

日経の4月26日付の論説記事が書いたように、戦後の防衛を全面的に米軍に頼ってきた日本にとって、米中の板挟みになりたくないという考え自体が間違っている。「中立はあり得ない」のだ。

From Foreign Policy Magazine

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中