最新記事

日韓関係

慰安婦訴訟は却下...時間が解決しない日本と韓国の歴史問題にバイデンはどう出る?

The Legacy of Wartime Atrocities

2021年4月30日(金)11時57分
スルキ・リー、ソフィア・ジョーンズ、ロビー・グレーマー

日本政府は主権免除の原則を理由に一連の審理を欠席。韓国政府に訴訟の却下を求めてきた。

ソウル中央地裁は1月の判決で、日本は「意図的、組織的、かつ広範囲にわたる反人道的な犯罪行為で国際的な規範に違反した」とし、主権免除は適用されないと認定していた。

行き詰まった日韓合意

いわゆる慰安婦の問題で、日本は過去に繰り返し謝罪しているが、法的な責任までは認めていない。財産・請求権の問題は、1965年の国交正常化に際して締結された日韓基本条約と関連協定で解決されたと主張。このとき日本政府は数億ドルの経済支援と融資を行っている。

2015年には慰安婦問題について日韓合意が交わされ、両国政府の間で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認。日本政府は「責任を痛感」し、元慰安婦の支援を行う財団の設立に10億円を拠出した。

しかし、元慰安婦らは、日韓合意は日本が法的責任を受け入れる段階まで至らず、元慰安婦が交渉のテーブルに着かなかったと主張している。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は17年末に、日韓合意には欠陥があり「慰安婦問題を解決できない」と述べた。19年には、合意に基づいて設立された財団を解散させた。

米政府は今回の裁判についても慰安婦問題をめぐる直近の日韓の緊張についてもコメントしていない。だが「バラク・オバマ元大統領が韓国に対日関係改善の圧力をかけた」ように、バイデンも日韓関係の修復に向けて外交圧力をかけるだろうと、高麗大学の政治学教授・李信和(イ・シンファ)はみる。

バイデンは就任まもない今年3月、国務長官と国防長官を東京とソウルに派遣し、国外での最初の外交会談を行わせた。バイデン政権の「閣僚級高官の最初の外遊先に日本と韓国を選んだのはただの偶然ではない」と、アントニー・ブリンケン国務長官は3月17日にソウルで語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中