最新記事

アメリカ

バイデン大統領も排外主義者? 難民受け入れは、なんとトランプ時代と同数

2021年4月21日(水)19時50分
ジョシュア・キーティング
テキサス州の移民収容施設

テキサス州にある同伴者のいない未成年者の移民収容施設(3月30日) DARIO LOPEZ-MILLSーPOOLーREUTERS

<トランプ時代の排外主義を批判していたはずのバイデン大統領だが、難民受け入れ数の上限をトランプ時代の1万5000人に据え置くと発表した>

バイデン米大統領は4月16日、これまでで最も劇的な政策転換を行った。2021会計年度(20年10月~21年9月)の難民受け入れ数の上限を1万5000人に据え置くと発表したのだ。

1万5000人という数字は、トランプ前政権が強硬な反移民政策の一環として設定したもので、40年前に現行の難民受け入れプログラムが導入されて以降で最小だ。

バイデンは大統領選の最中、トランプの難民政策を「冷酷で近視眼的」と非難。年間の上限を12万5000人に引き上げると同時に、「毎年少なくとも9万5000人の最低受け入れ枠を作る」と約束していた。

国務省は2月上旬、今年の上限を6万2500人に引き上げる方針を議会に通知した。バイデンは来年には12万5000人に増やす予定だと語り、難民受け入れプログラムを再建・拡充するための大統領令を発表した。

それ以来、NGOや議会の支持者は大統領が6万2500人という数字を正式決定する日を心待ちにしていた。だが16日の発表は、トランプ時代と同じ。支持者の多くから批判が殺到すると、ホワイトハウスは「最終的な」上限は5月15日に決まると微修正したが、サキ大統領報道官は当初目標の6万2500人には届かないだろうと言った。

トランプが難民受け入れシステムをめちゃくちゃにしたせいで、目標の達成が不可能になった──というのが政府の表向きの説明だ。ある当局者はロイター通信に対し、「予想以上にひどい状態で、約束した数字を実現するためには、大規模なシステムの修復が必要だ」と語った。

ニューヨーク・タイムズの取材に応じた当局者は、「同伴者のいない未成年者による国境越えが急増したため、難民担当部局の対応能力が既に限界に達したとの懸念が生じた」と言った。だが同紙によれば、移民と難民は全く別のシステムで処理されているので、この説明はおかしい。

6万2500人の目標が今年は物理的に達成困難になったとしても、トランプ時代の数字に少しでも上乗せして発表できない理由にはならないと、NGO国際難民支援会のエリック・シュワーツ会長は指摘する。「(バイデンは)6万2500人の公約を達成しなくても、前政権より増やすことはできるはず。明らかに政治判断に基づく決定であり、本当に残念だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ

ワールド

台北駅近くで無差別刺傷事件、3人死亡 容疑者は転落
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中