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インド、二重変異株の猛威で1日に感染34万人「医療は崩壊した」

2021年4月27日(火)17時30分
青葉やまと

1日あたりの新規感染者の世界最多記録を4日連続で更新...... REUTERS/Danish Siddiqui

<インドでの1日あたりの感染者数が世界最悪を記録した。医療関係者たちは、二重変異株が感染爆発を招いた可能性を指摘する>

感染第2波が猛威を振るうインドで4月25日、新型コロナウイルスの過去24時間の新規感染者数が34万9691人に達した。世界最多記録を4日連続で更新している。世界の新規感染者数の3人に1人がインドに集中している計算になる。死者は2700人を上回った。事態を受けてインド政府は首都デリーのロックダウンを1週間延長し、5月3日未明までとした。

医療システムは逼迫し、混迷を極める。ヒンドゥー紙は、デリーの国営病院が満床となり、ストレッチャーをベッド代わりに利用する「混沌とした光景」が広がっていると報じる。通常のベッドを2人の患者で共有する場合も見られ、入院できただけでも幸運だとされている。

英BBCは動画のなかで、重症の夫を医師に診てもらおうと10時間もストレッチャーを引き続けた女性を間近で捉えている。女性は意識を失いつつある夫の名を呼び続けるが、多くの患者がひしめく院内で診察は適わなかった。女性はそのまま病院の待合いスペースで夫を看取った。


デリーでも病院の満床が相次いでいる。印ニュースメディアのNDTVによると、以前利用されていた500人規模の仮設収容施設をインド政府が再稼働させ、国境警察を動員して看護に当たらせる計画が持ち上がっている。これとは別に結婚式場を陽性者の待機所に転用するなど、使える限りのあらゆる物資を投入した総力戦が続く。

インドでは医療機関のほか街頭でも感染率の抜き取り調査を行なっており、インディアン・エクスプレス紙によると陽性率は36〜37%に達している。

圧倒的に酸素足りず、現地医師は「医療全体が崩壊した」と語る

状況を一層深刻にしているのが、重症患者に必要な医療用酸素の不足だ。BBCは、多くの州で医療体制が危機的状況を迎えるなか、少なくともデリーの2つの大病院で酸素が尽き、最大700名が影響を受けたと報じている。

現地NDTVの報道によるとデリーの私立病院では23日夜、病床への酸素の供給圧力が弱まったことで入院患者25名が死亡した。大部分の地域で酸素の生産が需要に追いつかず、この病院でも酸素輸送車の到着が大幅に遅延していた。

混乱は他の病院にも広がっており、ロイターは4月23日、「過去24時間の死者も記録上最多の2263名へ跳ね上がり、ニューデリーを含む北部および西部インド各地の(医療)当局は、ほとんどの病院が満床となり酸素が尽きていると警告した」と伝えている。

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