最新記事

中国

中国人ブロガー「英雄烈士保護法」で初の起訴──中印国境の戦死者を侮辱した罪

Chinese Blogger Charged Under Hero and Martyr Law Confesses on State Media

2021年3月3日(水)17時24分
ジョン・フェン
CCTV,自白,中国,英雄烈士保護法

中国国営放送CCTVで流された、調査報道ブロガー、仇子明の「自白」 CCTV

<中印国境紛争の死者は公式発表より多かったはずだと嘘を書いて「後悔している」と自白した映像も放送>

中国の南京市に住む著名ブロガーが、「英雄烈士保護法」で起訴された。中印国境地帯で2020年6月に発生し、複数の死者が出た両国軍の衝突について、中国政府の発表に疑問を呈したことを罪に問われたものだ。中国では最近刑法が改正され、国家の英雄や国のために命を落とした人々の名誉を傷つける行為が違法とされたばかりで、このブロガーはこの法律が適用された最初の人物となった。

中国沿岸部にある江蘇省の省都、南京市の検察は3月1日、38歳の仇子明(きゅう・しめい/ Qiu Ziming)に対する容疑を明らかにした。中国当局はちょうどこの日から、同国が2018年に制定した英雄烈士保護法に基づき、個人を起訴することが可能になっていた。

仇は、2月20日に警察に身柄を拘束された。原因は、前日に仇が投稿した2つのブログ記事。その中で仇は、中印国境地帯にあるガルワン渓谷で2020年6月に起きたインド軍との衝突で、中国政府の公式見解以上に多くの中国兵が亡くなった可能性が高いとする見解を示した。

仇は中国政府が19日に初めて公表した軍の死者数に関して疑問を呈した。中国政府は、衝突が起きてから8カ月を経て初めて、戦闘のなかで将校1名が重傷を負い、兵士4名が死亡したと発表した。

「戦死者を嘲笑」

調査報道を行うジャーナリストとして活動していたブロガーの仇は、「騒動挑発」容疑で逮捕された7名のうちの1人。これは、「社会秩序を乱す行為」に対して最も頻繁に適用される、範囲の広い罪状だ。だが、南京市の人民検察院によれば、中国の刑法における新たな修正条項が3月1日に施行されたことにより、仇は今後、2020年に戦死した兵士たちの「名誉を損ない、嘲笑した」罪によって最長で3年の懲役刑に直面することになるという。

仇は2月19日、中国のソーシャルメディア微博(ウェイボー)の、自身のアカウント「辣筆小球(Labi Xiaoqiu)」において、「死亡した4名の兵士はみな、(将校を)救出しようとしていた。救出の任務を帯びた兵士たちが死んでいるのなら、命を救えなかった(兵士が)もっとたくさんいるはずだ」と投稿した。

一方、インド政府は、ラダック地方で起きたこの衝突の直後に死者数を発表しており、インド兵士20名が死亡したと明らかにしていた。これについて仇は、インド側がすぐに発表に踏み切ったのは、死者の数が中国より少なかったからだと主張した。

双方に死者を出した2020年の衝突以降、インドのメディアは、当局筋からの情報として、中国軍に最大で40名の死者が出たと報じていた。ただしこの数字は、これまで公式には確認されていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中