最新記事

ドイツ

メルケルのいないドイツ与党CDUは迷走中

A Body Blow To CDU

2021年3月25日(木)18時20分
スダ・ダビド・ウィルプ(ジャーマン・マーシャルファンド・ベルリン事務所副所長)
ラシェットCDU党首とメルケル首相

ラシェットCDU党首(左)はメルケル首相(右)の有力な後継候補とみられていたが、今回の地方選敗北でリーダーシップが問われる状況に Sean Gallup/GETTY IMAGES

<連邦政府与党のCDUが州議会選で惨敗、このままでは9月の連邦議会選も危うい>

ドイツ有数の工業都市シュツットガルト。質実剛健な気風で知られ、自動車大手ダイムラーやポルシェをはじめとする世界的な企業が本社を置くこの街で、3月14日、選挙が行われた。

正確に言うと、シュツットガルトがあるバーデン・ビュルテンベルク州の州議会選挙だ。結果は、アンゲラ・メルケル首相の連邦政府与党で、州政府の連立与党でもあるキリスト教民主同盟(CDU)の大敗に終わった。

今年はドイツにとって選挙の年だ。9月には連邦議会(下院)選も予定されている。CDUは、過去16年間リーダーシップを取ってきたメルケルが首相を目指さないことを表明しているため、春にも首相候補を一本化して、政権維持に向けて勢いをつけようとしていた。1月には、アーミン・ラシェット新党首が誕生したばかりだった。

そんななかでの地方選惨敗は、大きな痛手になった。なにしろCDUの得票率が5年前の前回より3ポイント近く下がったのに対し、連立相手である緑の党は得票率を上積みして州議会第1党の座を維持。今後の州連立政府づくりで主導権を握るのは確実だ。

数カ月前までは、バーデン・ビュルテンベルクでは緑の党とCDUの連立が、連邦政府ではCDUと社会民主党(SPD)の連立が続くのが既定路線と考えられていた。だが、新型コロナウイルス感染症絡みの騒動で、全てが分からなくなってきた。

AfDは衰退に向かう?

バーデン・ビュルテンベルクでCDUが敗北したのは、ワクチン接種が遅れていることと、マスクの調達をめぐりCDU議員が手数料収入を得ていたことという、連邦レベルでの不満が原因になったとみられている。

それが今後も収束しなければ、CDUは連邦下院で第1党の座から転落する可能性さえ出てきた。バーデン・ビュルテンベルクで緑の党がCDUではなく、SPDと自由民主党(FDP)を連立相手に選ぶ可能性もある。

今回のバーデン・ビュルテンベルク州議会選では、ドイツ政治の今後を示唆する出来事がほかにもあった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中