最新記事

化石

翼のあるサメ......約9300万年前の太古のサメの新種が発見される

2021年3月23日(火)18時30分
松岡由希子

サメとエイのキメラのような外観を持っていた...... Image credit: Oscar Sanisidro

<メキシコ北東部で発見された化石を分析し、翼のように大きな胸びれを持つサメが白亜紀の約9300万年前に生息していたことを明らかになった......>

フランス国立科学研究センター(CNRS)らの国際研究チームは、メキシコ北東部バジェシージョの石灰石採石場で2012年に発掘された化石を分析し、翼のように大きな胸びれを持つサメが白亜紀の約9300万年前に生息していたことを明らかにした。この新種は「アクイロラマナ・ミラルカ」と名付けられている。

サメとエイのキメラのような外観

2021年3月19日に学術雑誌「サイエンス」で発表された研究論文によると、この新種は、頭から尾までの長さが1.66メートルであるのに対し、1.9メートルもの長い胸びれを持ち、頭が短く、口が大きい。これらの特徴は、マンタ(オニイトマキエイ)やイトマキエイと似ている。

その一方で、ジンベイザメやイタチザメのような非相称の尾びれも持つ。つまり、この新種は、サメとエイの形態学的特徴を兼ね備えた、キメラのような外観となっている。

この新種は、尾びれで推進力を得ながら、胸びれを使って体を安定させ、比較的ゆっくりと泳いでいたとみられる。また、化石では歯が見つかっていないものの、幅広の大きな口には小さな歯があったものと考えられ、ジンベイザメやマンタのように、プランクトンを食べていたと推定されている。

cont-winged-eagle-shark.jpg

頭から尾までの長さが1.66メートル、1.9メートル胸びれを持つ...... Image credit: Wolfgang Stinnesbeck

サメの進化の解明に役立つ

この新種の発見は、白亜紀の海洋生態系やサメの進化の解明に役立つものとして注目されている。

プランクトンを摂食する海棲生物は、現在、ジンベイザメやウバザメのような紡錘形の体型の種と、マンタやイトマキエイなど、翼のような胸びれを持つ種に分類される。

プランクトンを濾過摂食する白亜紀の海棲生物は、すでに絶滅した「パキコルムス科」のみが確認されていたが、この新種によって2種目が見つかった。この新種は、マンタやイトマキエイが現れる3000万年以上前に生息していたことになる。

これらのことから、研究チームは、「プランクトンを摂食する大型の海棲生物は、すでに白亜紀に生態形態学上、2つに分かれており、翼のような胸びれは、プランクトン食性のサメとエイでそれぞれ独立して進化したのではないか」と考察している。

メキシコで見つかった太古のサメの新種 Grupo REFORMA-YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 10
    女教師の「密着レギンス」にNG判定...その姿にネット…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 4
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中