最新記事

クーデター

少女や少年が頭部を撃たれ...... ミャンマー、戒厳令下のデモで20人死亡

2021年3月16日(火)09時36分

クーデターを通して実権を掌握した国軍に対する抗議デモが続くミャンマーで、警官隊による発砲で少なくとも20人が死亡した。軍事政権は主要都市ヤンゴンの一部で戒厳令を発令し、デモ鎮圧に向けて司令官らに広範な権限を与えた。写真は3月14日、ヤンゴンで撮影(2021年 ロイター)

クーデターを通して実権を掌握した国軍に対する抗議デモが続くミャンマーで、15日は警官隊による発砲で少なくとも20人が死亡した。軍事政権は主要都市ヤンゴンの一部で戒厳令を発令し、デモ鎮圧に向けて司令官らに広範な権限を与えた。

地元メディアと目撃者の情報によると、この日は第2の都市マンダレーのほかアウンランなどでもデモが行われ、警官隊が参加者に向けて発砲。18歳のデモ参加者はロイターの電話取材に対し「少女が頭を撃たれ、少年が顔面を撃たれた」と述べた。

ミャンマーの人権団体、政治犯支援協会(AAPP)は、この日は治安部隊の銃撃で少なくとも20人が死亡したと明らかにした。これまでに183人が死亡したという。

ミャンマー・ナウによると、デモはヤンゴンをはじめ全国に拡大。マンダレーのジャーナリストによると、マンダレーで1人が撃たれ、死亡した。

14日にはヤンゴン郊外にある中国資本の工場が放火されたことを受け、治安部隊がデモ隊に発砲。中国の環球時報は、ヤンゴンで合計32の中国資本の工場が破壊されたと報じている。

中国外務省の趙立堅報道官は北京で「中国の企業とその従業員の安全確保に向けミャンマー当局が一段の措置を実施することを望んでいる」と述べた。

中国政府が国軍のクーデターを表立って批判していないことで、ミャンマーでは反中感情が高まっている。抗議デモのリーダーの一人、Thinzar Shunlei Yi氏は、ミャンマー人は中国に反感を持っていないとしながらも、「ミャンマーとの関係を重視し、(ミャンマー国内の)中国事業を守りたいなら、中国政府は国軍の支援を止める必要がある」と述べた。

国連の報道官は、グテレス事務総長が国軍による暴力の拡大に驚いているとし、「事務総長は、軍による弾圧を終わらせるために国際社会が協調して、また二国間でも取り組むことを求める」と述べた。

さらに、状況の鎮静化のほか、対話と民主主義回復への環境を整えるために特使派遣を許可するよう、軍事政権側に求めた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こした本当の理由
・ミャンマー軍政を揺るがすミルクティー同盟──反独裁で連帯するアジアの若者たち


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林官房長官が政策発表、1%程度の実質賃金上昇定着な

ビジネス

アングル:FRB「完全なギアチェンジ」と市場は見な

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10

ビジネス

GLP-1薬で米国の死亡率最大6.4%低下も=スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中