最新記事

日本社会

東日本大震災から10年、犠牲者約2万人以上 コロナ禍で2年ぶりの政府主催の追悼式

2021年3月11日(木)16時45分

3月11日、政府が開いた追悼式典には、天皇・皇后両陛下が出席した。天皇陛下は「困難な状況にある人々が、誰一人取り残されることなく、1日でも早く平穏な日常の暮らしを取り戻すことができるように、復興の歩みが着実に実を結んでいくよう、これからも私たちみなが心を合わせて、被災した地域の人々に末永く寄り添っていくことが大切であると思います」とお言葉を述べた。写真は3月11日、東京の国立劇場で撮影(2021年 代表撮影)

東北から関東の広い地域を襲った東日本大震災から、11日で10年を迎えた。強い揺れとその後に繰り返し押し寄せた津波は、2万人以上の命を奪った。今も2500人超の行方が分かっていない。福島第1原子力発電所の廃炉は想定通り進まず、いまだに故郷に戻れない人が多くいる。この日は朝から各地で人々が集まり、地震が発生した午後2時46分には犠牲者に黙とうをささげた。

みぞれが降っていた10年前

震災からちょうど10年となる11日早朝、福島県いわき市の久之浜地区にある秋葉神社には、20─30人の住民が集まり、奇跡的に倒壊を免れた社に手を合わせた。みんな高齢で、体調や天気、日々の生活について話しながら、折り鶴や花で神社を飾った。これほど暖かく、風がない日はこの10年で初めてだという。

2011年3月11日午後2時46分に三陸沖で発生したマグニチュード9.0の大きな地震は、宮城県北部で最大震度7を記録した。太平洋沿岸を広範に襲った巨大な津波は、最高16.7メートルだったと気象庁は推定している。

久之浜地区にも津波が押し寄せ、街は流された。その中で、海岸から近いこの神社は倒壊せずに残った。「10年前、みぞれが降ってきて寒かった。寒いとどうしても、あのときのことを思い出さざるを得なかった」と、語り部として活動する62歳の女性は言う。「10年ひと区切りと言うが、気持ちの上ではいつもと変わらない。みんながきょう、この神社に来て手を合わせているんだな、と」。

いわき市で飲食店を営む新妻篤さん(47)も、3月11日が来るたびに秋葉神社を訪れる。新妻さんが静かに祈りを捧げた石碑には、震災で犠牲になった66人の名前が刻まれている。そこには67歳で亡くなった母親の光子さんの名前もある。

光子さんの家は神社から近く、海岸から50メートルほどしか離れていなかった。新妻さんの子どもたちの世話をしていた彼女は、急いでみんなを車に乗せた。しかし、忘れ物を取りに戻ったところで津波に流された。遺体が見つかるまでに1カ月以上かかった。

「おばあちゃん子だった子どもたちも、みんな元気に過ごしているよ。無事に過ごしていると、感謝の気持ちを伝えにきた」と、新妻さんは話す。

警察庁によると、震災の死者は全国で1万5000人以上。復興庁は、関連死を含めた犠牲者は2万人以上としている。国内メディアによると、今なお2500人を超える行方不明者がいる。建物の被害は全壊が約1万6000戸、半壊が約2万6000戸に及んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB後任議長選び、「正式プロセス」既に開始と米財

ワールド

イスラエル、シリア南部で政府軍攻撃 ドルーズ派保護

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 6
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 7
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 8
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 9
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 10
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中