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韓国社会

慰安婦問題で韓国が公的議論を受け入れるとき

Comfort Women Groupthink

2021年2月26日(金)18時00分
ジョセフ・イ(漢陽大学政治学部准教授)、ジョー・フィリップス(延世大学アンダーウッド国際学部准教授)

ソウルにある慰安婦像(平和の少女像)の前では、日韓合意の破棄を求める学生団体が座り込み(2020年) CHRIS JUNGーNURPHOTO/GETTY IMAGES

<強制連行を否定する米論文に怒りの韓国世論、必要なのは異論を検証する冷静な公的対話だ>

大日本帝国は韓国人女性に性的労働を強制した──そんな「定説」に疑問を呈した論文が韓国で猛批判を浴びている。ハーバード大学ロースクールのジョン・マーク・ラムザイヤー教授が、インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス誌で発表した「太平洋戦争における性契約」だ。

韓国を拠点とする学者である私たちは、この論文には非難ではなく論議が必要だと訴えたい。ラムザイヤーが個人的に日本と親交が深いことを理由に、学問的誠実性に欠けると攻撃するのは非生産的で、外国人差別めいている。

従軍慰安婦は性奴隷ではないと結論付けたラムザイヤーに謝罪を要求するのは、啓蒙主義以来の科学の発展をもたらした熟議のプロセスをむしばむ行為だ。問題の論文が韓国側の視点に欠けるという非難は、均質的で被害者中心の「韓国的見解」にほかならない。それによれば、異論を唱える者は「反韓、または親日の利敵行為者」なのだ。

韓国では慰安婦に関する研究や論議が制限され、そのせいで、普段は活発な公的論議を重視する社会も政治機構も集団思考に陥っている。慰安婦は強制連行されたとの言説に反論する少数の学者は往々にして活動家から嫌がらせを受け、所属先の大学で調査の対象になり、起訴される。

世宗大学日本文学科の朴裕河(パク・ユハ)教授は2013年に出版した著書『帝国の慰安婦』で慰安婦の体験の多様性を伝え、一部証言の信憑性を疑問視した。その主張が生み出したのは学術的議論ではなかった。

元慰安婦らによる損害賠償訴訟を受け、同書は一部削除され、朴は元慰安婦の名誉を毀損したとして賠償金9000万ウォン(約860万円)の支払いを命じられた。検察は朴を在宅起訴し、懲役3年を求刑した(17年に控訴審で罰金1000万ウォンの有罪判決)。

17年には、国立大学である順天大学校の教授が講義で、一部の女性は「おそらく」慰安婦に志願したと発言。教授職を罷免され、懲役6カ月の実刑判決を受けた。

補償金受給は地雷原

批判的言説の抑圧は、議論やデータに基づいて支配的言説に疑問を投げ掛ける意識の欠如につながっている。慰安婦問題をめぐって、活動団体は自分たちの主張に沿って情報を取捨選択してきた。

慰安婦だったことを初めて名乗り出た韓国人女性、金学順(キム・ハクスン)は「日本軍性奴隷問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)の前身団体、韓国挺身隊問題対策協議会の尹貞玉(ユン・ジョンオク)共同代表に対する当初の証言で、中国で慰安所の管理をしていた養父に、別の少女と一緒に連れて行かれたと話した。

だが、サンフランシスコ州立大学のサラ・ソー教授の著作『慰安婦──韓国と日本における性暴力とポスト植民地主義の記憶』(08年)によれば、正義連が93年に発表した証言録では、養父についてのくだりが削除されていた。

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