最新記事

ポピュリズム

米欧の研究で分かった、ポピュリスト政党の倒し方

HOW TO DEFEAT POPULISM

2021年2月23日(火)17時50分
ジョン・オースティン(ミシガン経済センター所長)、ジェフリー・アンダーソン(ジョージタウン大学教授)、ブライアン・ハンソン(シカゴ国際問題評議会バイスプレジデント)

イタリアでは2018年の総選挙で、ポピュリスト政党の「同盟」と「五つ星運動」が反移民感情に乗って躍進。彼らの支持基盤となったのも、北部の工業地帯と、長年経済的に低迷する南部の農村地帯だった。

しかし「古い経済」の衰退にあえいでいる地域も、新たな経済機会が見つかると、住民の投票行動が変わる。

アメリカでは、かつて鉄鋼業で栄えたピッツバーグ(ペンシルベニア州)や、製材業の中心だったグランドラピッズ(ミシガン州)が、ITやバイオ産業の拠点として変身を遂げるに従い、選挙でもナショナリズムやノスタルジーを訴える政治家から、中道政治家へと支持がシフトしてきた。

イギリスやフランス、ドイツでも同じような傾向が見られる。旧工業地帯ではポピュリスト感情が極めて強いが、最悪の時期を超えた地域では、大衆迎合的な政治家の人気は限定的だ。

ドイツの工業都市デュイスブルクは、ミクロ電子工学を中心に地域経済が再生し、2017年の総選挙におけるAfDの得票率は周辺地域の平均を大幅に下回った。

フランスの2017年総選挙でも、失業率が最も高い10地方行政区画のうち9つでは国民戦線が勝利したが、リヨンやストラスブールなど経済再生を果たした旧工業都市では、マクロン率いる中道派政党が勝利した。

ブレグジットを決めたイギリスの国民投票でも、経済再生の途上にあったリーズやマンチェスター、ニューカッスルといったかつての製造業の中心地はEU残留を支持した。

つまり明るい未来を展望できる地域では、人々は過激な主張に流されず、寛容な姿勢を持ち、先進的な見方を持つ心の余裕があるようだ。

こうした地域の変貌は偶然起きたわけではない。政府と民間のリーダーが、地域経済を転換するために取ってきた施策の結果である。

逆に言えば、政治家が何もしなければ、こうした地域の住民は引き続き疎外感を募らせ、ナショナリズムと保護主義、排外主義を支持し、国際的な連携から手を引くべきだと主張するだろう。

サプライチェーンの見直しを

バイデン政権が発足したことで、既に米欧関係には修復の兆しが見られる。これは米欧のラストベルトの将来にも大きな影響を与えるだろう。アメリカとヨーロッパは、貿易と安全保障という伝統的な協力領域を超えて、ラストベルト衰退の原因にも全面的に取り組む必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落後切り返す、FOMC受け荒い

ビジネス

10月米利下げ観測強まる、金利先物市場 FOMC決

ビジネス

FRBが0.25%利下げ、6会合ぶり 雇用弱含みで

ビジネス

再送〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中