最新記事

イラン

国境を越えて反体制派の暗殺や弾圧を活発化させるイラン

Iran Expands Foreign Assassinations While Decrying U.S. Killings: Report

2021年2月5日(金)15時00分
デービッド・ブレナン

フリーダムハウスによれば、イランは2014年以降、3カ国で少なくとも5件の暗殺または暗殺未遂とのつながりがあり、さらにそのほかの2カ国で複数の計画があった(いずれも未然に阻止された)。このことは、2000年代に小康状態にあった活動が再び増加に転じていることを示していると、指摘している。

イランが関与したとされる暗殺計画は、2015年と2017年にオランダで複数の元イラン軍関係者が殺害された事件と、2019年にトルコのイスタンブールで亡命したイラン元諜報機関当局者が銃撃されて死亡した事件だ。イスタンブールの事件については、トルコとアメリカが「イランの仕業だ」と主張している。

このほかに2つの計画が未然に阻止された。そのうちの1件は2018年にベルギーで、イランの反体制組織ムジャヘディン・ハルク主催のイベントを狙った爆弾攻撃計画だった。もう1件も2018年で、デンマークの当局が、(イランの反政府武装勢力)アワハズ解放アラブ闘争運動のトップを狙った暗殺計画を阻止したと発表している。

またアルバニアの当局者たちは、同国内に拠点を持つムジャヘディン・ハルクを狙った複数の攻撃を阻止してきたと主張している。

拉致・連行・死刑の強硬手段も

フリーダムハウスは、イラン政府は国外にいる反体制派の口を封じる手段として、身柄の引き渡しも行っていると指摘した。その一例が、フランスを拠点に活動し、イランの体制に批判的なニュースサイトやソーシャルメディアのチャンネルを運営していたルホラー・ザムだ。

ザムは2019年に(理由は不明だが)イラクを訪れていたところを、イランの工作員らに拉致されてイランに連行された。その後、彼は国家に対する複数の反逆罪で有罪となり、2020年12月に死刑が執行された。

フリーダムハウスはまた、イラン政府が国外で暮らす複数のイラン人を強制的に徴兵したり、インターポール(国際刑事警察機構)を使って反体制活動家に嫌がらせをしたり、スパイウェアを使って政府に批判的な者を監視したり、敵対勢力と見なす者の渡航の自由を制限するためにパスポートや犯罪歴を操作したりしたと指摘する。

「イランによる国境を越えた抑圧行為は、拉致や殺害、身柄の拘束にとどまらず、政治的な抵抗活動や独立系ジャーナリズムに関与した者を標的にそのほかの形で圧力をかけている」と報告書は指摘。その手法として「絶え間ない、集中的な嫌がらせ、脅しや監視」が行われていると述べている。

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中