最新記事

クーデター

ミャンマー、国軍が鉄道職員に発砲か 兵員輸送の線路での抗議デモに圧力

2021年2月18日(木)19時10分
大塚智彦

ミャンマー国軍が「不服従運動」を行う鉄道職員に向けて発砲した RFA Burmese / YouTube

<市街地に装甲車を配置するなど抗議デモへの圧力を強める国軍。ミャンマー全国で一触即発の状況が続く>

2月1日に起きた国軍によるクーデターとそれに反対する市民による抗議デモで社会的混乱が続くミャンマー。2月17日、中部の都市マンダレーでは治安当局による発砲事件が発生した。現地のメディアが発砲の様子をインターネット上にアップしたことなどから明らかになった。

ミャンマーのオンラインメディア「ボイス・オブ・ミャンマー」や米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)ビルマ版」が18日午前相次いで伝えたところによると、17日午後10時過ぎ、中部にあるミャンマー第2の都市マンダレーにあるマンダレー鉄道職員の集合住宅地区で発砲音が連続して起きた。

いずれも死傷者などの数字は分かっていないと伝えている。「RFAビルマ版」は「発砲音だけでゴム弾によるものか実弾なのかは判然としない」とも伝えている。

国軍による兵員輸送を拒否した鉄道職員

現地の情報などによると、国軍は17日昼間にマンダレーからミャンマー北部カチン州の州都ミッチーナに向かう兵員輸送の特別列車の運行をマンダレー鉄道局に要請した。ところがクーデターに反対する公務員らによる「不服従運動(CDM)」に賛同する鉄道局職員やその家族、さらに周辺の一般市民までもが集まって線路上で抗議活動を展開。このため国軍はこの日は兵員輸送の断念に追い込まれたという。

このような鉄道局職員らによる「不服従」に怒った国軍や警察が同日夜に鉄道職員の宿舎、住宅が並ぶ一角に武装して進入し、投石や発砲を繰り返した。

ネット上に公開された映像では盾を全面に押し立てて集団となった国軍や警察の一群が進んでくる様子が確認できる。さらに後方から小銃を手にした治安当局者が周囲を警戒しながら投石する様子に交じって、発砲による閃光と銃撃音が何度も繰り返し記録されている。

建物上層部から撮影されたとみられる俯瞰した映像と共に、治安部隊の進行方向左側の地上の物陰から密かに撮影されたとみられる映像も公開されている。

国軍が手を焼くCDMの拡大

クーデターから半月が経過して国軍側は政権基盤を着々と固めつつあり、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相ら前政権幹部の拘束もいまだに続いている。

一方で一般市民や学生などによる反クーデターの抗議デモは、中心都市ヤンゴンや首都ネピドーをはじめ、一部の国軍の駐屯地がある地方を除いてほぼ全国の都市に拡大しているという。

街頭でのデモに加えて、17日からはヤンゴンなどの主要道路に自動車やバスが放置されて治安部隊の移動を阻害する動きも出てきたり、行きかう車両などがクラックションを一斉に鳴らしたりして「反対の意思表示」を示すなど気運は盛り上がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

ブラックストーンとTPG、診断機器ホロジック買収に

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

タイ、通貨バーツ高で輸出・観光に逆風の恐れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中