最新記事

中国

自国のワクチンにケチがついた腹いせにファイザーのワクチンが危ないと言いふらす中国

China Spreads Pfizer Vaccine Disinformation As Its Own Shots Look Dubious

2021年2月1日(月)18時06分
アクシタ・ジェイン

中国シノバック社のワクチンをかざすブラジルの医療従事者(1月28日、クリチバ市)  Rodolfo Buhrer-REUTERS

<新型コロナウイルスの発生源を調べるために武漢に入ったWHO調査団からも世界の目を逸らしたい狙いが>

中国企業が開発した新型コロナウイルスワクチンの有効性が低いとの研究結果が明らかになる中、中国の政府系メディアは厳しい治験を経て数カ国で承認されたファイザーのワクチンに対するフェイクニュースを流布している。

オーストラリアの政府系シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」によれば、ブラジルで行われた研究で中国のシノバック・バイオテック社のワクチンの有効性が当初見込まれていたよりはるかに低いことが明らかになって以降、中国によるフェイクニュースの拡散が急増しているという。

フェイクニュースの大半は、ノルウェーでファイザーのワクチンの接種を受けた高齢者が死亡した件にまつわるものだ。ノルウェー医薬品庁は、ワクチン接種後に高齢者施設の入所者30人が死亡した(1月21日時点)と明らかにした。この中には死因とワクチンの間の関連が疑われていないケースも複数含まれている。

「ノルウェーの高齢者施設や他の類似の施設では1日平均45人(の入所者)が死亡している。接種後すぐに死亡する入所者がいるからといって、因果関係があることにはならない」と、医薬品庁はコメントしている。

ノルウェーでは12月27日以降、約6万3000人がワクチンの接種を受けた。当局の集計では副反応は104件起きており、死者も出ている。軽度とは言え副反応により、もともと弱っていた高齢者の状態がさらに悪化した可能性もあると医薬品庁は見ている。

ノルウェーの死者を調べろと要求

ところがこの件に関し、中国の政府系メディアは調査を求める声を上げている。中国共産党機関誌人民日報系のタブロイド紙、環球時報は「主な英語メディアは申し合わせたかのように、この問題をすぐには伝えなかった」とする論評を15日に掲載。中国中央電視台(CCTV)系のニュースチャンネルCGTNは、西側メディアはこの問題を見て見ぬふりをしていると批判した。

折しも新型コロナウイルスの発生地とされる武漢では、その発生源を調べるWHOの調査団が活動を始めている。調査団の武漢入りと時と同じくして中国のワクチンに関し悪いニュースが伝えられるのは、習政権にとっては政治的リスクだ。

ちなみにブラジルの研究で明らかになったシノバックのワクチンの有効性はたった50.4%。それ以前に伝えられていた78%よりもずっと低い数値だ。また、ブラジルやトルコからは中国企業からのワクチンやワクチン材料の出荷の遅れを指摘する声が上がっている。

中国疾病対策予防センターの専門家は12月、ファイザーやモデルナが開発したmRNAワクチンに警鐘を鳴らした。mRNAワクチンが健康な人に接種されるのはこれが初めてで、今回のような形での実用化にリスクがないとは言えないからだという。

ニューズウィーク日本版 日本人と参政党
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月21日号(10月15日発売)は「日本人と参政党」特集。怒れる日本が生んだ参政党現象の源泉にルポで迫る。[PLUS]神谷宗幣インタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中貿易摩擦再燃で新たな下振れリスク、利下げ急務に

ワールド

トランプ氏、習氏と会談の用意 米財務長官 中国「混

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ビジネス

米BofAの7─9月期は増益、投資銀行業務好調で予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中