最新記事

米外交

バイデン次期政権でも「台湾重視」の対中強硬姿勢は変わらない

Taiwan to Continue Front-line Role in Joe Biden's Strategy to Contain China

2021年1月15日(金)16時25分
ジョン・フェン

中国の国営メディアに出演した複数のアナリストは、トランプ政権――特にマイク・ポンペオ国務長官――がバイデンに自分たちの中国政策を押しつけようとしていると指摘。12日の文書公表も、自分たちのインド太平洋政策を引き継がせるために、バイデンに圧力をかけるのが狙いだったと主張した。

13日には、バイデンがホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーに、ベテランのアジア専門家カート・キャンベル元国務次官補を起用することが明らかになった。安全保障問題担当大統領補佐官に就くジェイク・サリバンの直属である「アジア太平洋調整官」で、中国を含むアジア戦略の責任者だ。

キャンベルは2009年から2013年にかけて、バラク・オバマ前政権で東アジア・太平洋担当の国務次官補を務めた経験がある。台湾の駐米代表(大使に相当)である蕭美琴はキャンベル起用の発表を受けて投稿したツイートの中で、彼は「アジアで高い尊敬を集める人物」だと評した。

また台湾外交部の歐江安報道官は本誌に宛てた声明の中で、「カート・キャンベルは台湾の友人というだけでなく、この地域や中台関係にも精通している」と述べ、こう続けた。「キャンベルの起用は米台関係とインド太平洋地域の発展にとっていいことだ」

オバマ時代と大きく異なる状況

オバマ政権の「リバランス(アジア回帰)」政策に寄与したキャンベルは、2020年12月に台湾で開催された安全保障フォーラムに台湾の蔡英文総統とともにリモートで登壇している。蔡はこの時までに、サリバンや次期国務長官に指名されているアンソニー・ブリンケンとも会っている。

中国の複数の政策アナリストは、サリバンとブリンケンについて、オバマ時代からの「なじみの人物」であり、米中の関係修復の助けになり得るとみている。キャンベルについても同じように考えているかもしれないが、国防安全研究院のチェンは、その考え方は「リスキー」だと指摘する。

「4年前、8年前や12年前とは状況がまったく違う。中国は当時よりも強硬かつ攻撃的になっている」と彼は言う。「米民主党の政治家たちは、オバマ政権当時と同じような考え方はしないだろう」

チェンはキャンベルの2016の著書『THE PIVOT/アメリカのアジア・シフト』を引き合いに出し、キャンベルはインド太平洋地域の安定と安全保障を守るためには、ソフトパワーとハードパワーの両方を行使すべきだと考えていると説明した。

キャンベルは12日、米外交専門誌のフォーリン・アフェアーズに、ブルッキングス研究所の中国専門家ラッシュ・ドシと共同で執筆した論文を寄稿。この中で自らの政策方針を明らかにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラジルの対米輸出、全体の35.9%に50%関税適

ワールド

米が対カナダ関税35%に引き上げ、カーニー首相「失

ビジネス

印マルチ・スズキ、4─6月期は予想外の増益 輸出好

ワールド

IMF理事会、アルゼンチン向け融資20億ドルの実行
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中