最新記事

米外交

バイデン次期政権でも「台湾重視」の対中強硬姿勢は変わらない

Taiwan to Continue Front-line Role in Joe Biden's Strategy to Contain China

2021年1月15日(金)16時25分
ジョン・フェン

あと6日で新大統領に就任するバイデン(1月14日) Tom Brenner-REUTERS

<同盟国との協力を重視しながら、トランプ政権のインド太平洋戦略を引き継ぐ見通しだと専門家は分析する>

ジョー・バイデン米次期政権のインド太平洋戦略は、同盟国とより緊密に協力する一方で、基本的にはドナルド・トランプ現政権の戦略を引き継いで、中国の封じ込めを念頭に台湾重視の政策をとっていくことになるだろうと、外交専門家は分析している。

1月12日、米政府がインド太平洋戦略などについて2018年に承認した内部文書が公表された。本来は2043年まで非公表の扱いだったが、一部を編集した上でホワイトハウスが機密指定を解除したものだ。

文書は中国を同地域における「戦略上の主な脅威」と明記。中国政府が影響力の拡大を狙っていると指摘し、インドのことは理想的な対抗勢力だと位置づけている。

台湾については、中国政府からの圧力の高まりや「再統一」の脅威に直面しており、台湾が「独自に」中国に対峙・抵抗するための防衛戦略を実行できるようにすべきだと指摘。

アメリカは、中国がアメリカやその同盟国・友好国に対して武力行使することを抑止するために、「紛争時に中国に『第一列島線』内の制空・制海権を与えず」「台湾を含む第一列島線に位置する国や地域を防衛する」ための防衛戦略を作成する必要があるとしている。有事の際には、アメリカが台湾の防衛を行うことを示唆する内容だ。

米中関係の修復期待は「甘い」

第一列島線は、日本列島からフィリピン、マレー半島を結ぶ、中国の軍事戦略上の海上ライン。米政府の分析によれば、中国軍(特に海軍)は「接近阻止・領域拒否」戦略を強化することで、この第一列島線内から米軍を締め出す狙いだ。

台湾の政府系シンクタンク「国防安全研究院(INDSR)」のリャンチー・エバンズ・チェン準研究員によれば、公表された文書は、トランプ政権がインド太平洋地域について実行してきた内容とおおむね「一致」している。

トランプは4年間の任期の中で、台湾に対する武器売却を11回承認。2020年には、中国による軍事的圧力が30年ぶりの水準に高まったことを受け、118億ドル相当の「自衛用」武器売却を承認した。

「バイデン次期政権の台湾政策が、トランプ政権から大きく変わることはないだろう」とチェンは14日、本誌に語った。彼はまた、中国の戦略的脅威については連邦議会の民主・共和両党の見解が一致していることを指摘。米政府の対中姿勢も、今後大きく変わることはなさそうだとした。「中国政府は、バイデン次期政権が米中関係の再構築に乗り出すだろうと予想または期待しているが、それは考えが甘すぎると思う」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フォード195億ドル評価損、EV需要減退で不可避=

ワールド

英、外国からの政治介入調査へ 元右派政党幹部のロシ

ビジネス

川崎重社長、防衛事業の売上高見通し上振れ 高市政権

ワールド

米16州、EV充電施設の助成金停止で連邦政府を提訴
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中